アーカイブ | 6月, 2016

LGBTとムスリムが一緒になってラマダンの朝食を食べた

25 6月

フロリダ州のゲイクラブ銃撃から二週間が経とうとしている夜に、トロントのLGBTコミュニティセンターでラマダンの朝食集会が行われた。トロントのムスリムコミュニティ、LGBTコミュニティ、そして、LGBTムスリム・コミュニティが一緒になって企画したイベントである。イスラムフォビアとホモフォビアと立ち向かうために200人以上が参加した。

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フロリダ州のゲイクラブ銃撃を誰かのせいにするのは簡単だ。事件が起きた週末のニュースはオマル・マティーン容疑者がムスリムであることやテロ組織との接点ばかりにスポットライトを当てていた。事件の数日後、オマル・マティーン容疑者がゲイクラブの常連で、ゲイ向けの出会い系アプリを使っていたという証言が出てくると、それに合わせて報道の矛先もターゲットを変えた。一方で、フロリダ州にはLGBTコミュニティの人権を保護する法律がない。この事件で負傷した被害者はそれを理由に仕事をクビにされる可能性だってある。

皮肉なことに、フロリダ州のゲイクラブ銃撃はラマダンとプライドの最中に起きた。社会に溢れているイスラムフォビアとホモフォビアのおかげで、胸を張ってラマダンとプライドの両方に参加できる人は多くない。特に、ゲイやレズビアンでムスリムの人や、トランスジェンダーでムスリムの人たちにとって、自分らしくいられる場所は限られている。自分自身のアイデンティティが社会の中で敵対する立場にあるのは辛いものだ。この事件の後は尚更肩身が狭いのだろう。

「LGBTとムスリムのコミュニティを集めて、公園でピクニックがしたい!」

そんな友人の提案がきっかけだった。どんどんボランティアが現れて、コミュニティから寄付金も集まった。チャーチストリートのLGBTコミュニティセンターはスペースを提供してくれた。どうせならと、日没後にみんなでテーブルを囲んで一緒にラマダンの朝食を食べることになった。小さなアイデアがあっという間に大規模なイベントに発展していった。きっと、こんなときだからこそ、肩を寄せ合えるような場所が必要とされていたのかもしれない。

イベント会場の入り口には、ムスリムコミュニティとLGBTコミュニティの両方からの反差別声明が掲げられていた。トロントのムスリムコミュニティで活動するリーダーたちは、周りから批判されてもLGBTコミュニティを支援する姿勢を崩さなかった。誰かの生き方や属性に同意できなかったとして、相手を偏見したり、差別したりしてはいけない。それがイスラム教の教えであると一人の若いリーダーは語った。

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イベントが始まる前に、他のボランティアたちと断食明けのスナックを用意した。狭いキッチンの中で作業をしながら、みんなからこのイベントを良いものにしたいという真剣な意思が伝わってきた。

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イベントが始まると、あっという間に座席が埋まった。驚いたことに、トロント市長のジョン・トリーまで一緒にラマダンの朝食を食べに来ていた。イベント後にゲイバーに行くと言っていたので、市長としてプライドを満喫中なのだろう。

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9:03PMの日没に合わせてお祈りが行われた。このお祈りの形式についてはイベントが始まるまで意見が分かれていた。男性と女性が同じスペースで祈ることに抵抗を持つムスリムの人は少なくない。百歩譲って男女一緒に祈るとして、男性や女性と自認しない人はどうすればいいのか。最終的に、男性は左側、女性は右側で祈ることになり、暗黙の了解でどちらでもない人は真ん中で祈った。

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お祈りが終わると朝食の時間である。日没は遅いトロントに暮らしているとラマダンの断食も大変だろう。トロント郊外のハラルレストランが提供してくれた食事は絶品だった。

プレートいっぱいの食べ物を持ってテーブルに座ると、周りが笑顔で溢れていることに気付いた。ゲイやレズビアンのカップル、子供連れの家族、民族衣装を身にまとった人、取材に来ていたメディアなど、そこには多種多様の人たちがいた。その違いを持ち寄って、同じテーブルを囲んでこうして食事を楽しんでいる。それぞれの生い立ちを共有しながら、自分とは違う立場のストーリーに耳を傾けている。多文化共生のトロントでさえこんな光景は珍しい。そして、それにとても励まされた。

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イベントの後、帰り際にLGBTコミュニティセンター前のステップが光っているのに気付いた。そこにはフロリダ州のゲイクラブ銃撃で亡くなった人たちのための花束やカードが捧げられていた。多くの人たちが立ち止まって、時間をかけてメッセージを読んでいた。今年のプライドはなんだかお互いを支えようという愛のこもった空気が流れている。

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フロリダのゲイクラブ銃撃について

13 6月

いつもと同じ日曜日の朝。

紅茶を飲みながら携帯をチェックした。

フロリダのゲイクラブ銃撃のヘッドラインでニュースフィードが埋め尽くされていた。

「死者20人」という数字はどんどん増えて、午後には「死者50人」になっていた。

イスラム教徒であるオマル・マーティン容疑者がゲイを嫌悪していたという証言も出てきた。

そんな悲しいニュースと共に、ネット上は醜い言葉で溢れていた。

多くの人たちは怒りの矛先をイスラム教徒へと向けた。

携帯の電源を切った。

正直、あまりのショックに頭の中が真っ白だった。

6月、トロントはプライド月間を盛大に祝っている真っ只中である。

プライドが抗議デモから祝典に変わったのは、それだけ社会が変わったという証拠だ。

しかし、2016年にフロリダのゲイクラブで50人が銃殺されたというニュースはそれを揺るがすには十分だった。

その場にいた人たちのことを考えただけで胸が痛んだ。

時代が変わっても、ゲイだということで殺される。

その現実は残酷だ。

そして、今でも多くの人が差別や偏見のせいで命を落としている。

毎年、多くのトランスジェンダーの人たちがヘイトクライムで殺されている。

LGBTコミュニティの自殺率は相変わらずで、いじめ問題も深刻である。

ゲイクラブの帰りに夜道を歩く時、恐怖とは隣り合わせだ。

同性婚という華やかな権利で何もかも解決したわけではない。

今夜、世界各地で追悼イベントが行われた。

トロントも例外ではない。

ロウソクを手に握って、1000人以上の人たちがチャーチストリートに集まった。

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トロント市長やオンタリオ州首相まで出席していたことに驚いた。

近くに立っていた男の子は声に出して大泣きしていた。

周りの人たちは彼を気にかけていた。

そこには笑顔や優しさや愛が溢れていた。

こうやって支え合うことで、このコミュニティは悲しい出来事を乗り越えてきた。

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「暴力に対して、暴力で立ち向かってはいけない。このコミュニティは愛で暴力に打ち勝ってきた歴史がある。どうか、イスラムフォビアでホモフォビアに対抗しないでほしい。」

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「ゲイを嫌う行為も、イスラム教徒を嫌う行為も、同じ差別である。別々の問題ではない。片方の差別を許さずに、もう片方の差別に手を貸してはいけない。」

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「フロリダ州と同じように、トロントにも未だに問題がたくさんある。ホモフォビア。トランスフォビア。人種差別。性差別。そうした問題から目を背けてはいけない。」

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数々のスピーチの末に、数え切れないロウソクに火が灯された。

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暖かい光に照らされながら、手を繋いでみんなで祈った。

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朝からずっとモヤモヤしていた気持ちが少し晴れた気がした。

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「こんな悲しい事件があったからって、私たちがプライドを祝うことをやめるわけがない。暴力と恐怖で攻撃されるなら、私たちは愛で立ち向かうだけだ。自分を誇りに思う権利は誰にも奪えない。」

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このスピーチの言葉がとてもしっくり来た。

今年のプライドは例年以上に盛り上がりそうだ。