アーカイブ | 4月, 2013

パートナー法では守れない愛。

13 4月

カナダと違って、アメリカは保守的な州が多い。

カナダでは保守的とされるアルバータ州も、アメリカの南部に比べれば可愛いものよ。

そんな今日はアメリカのミズーリ州に住むゲイカップルに起きた出来事を紹介するわ。

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この写真のカップルは、ロジャーとアレンという名前で。

彼らは5年前よりパートナー法で結ばれ、事実婚に近い間柄であった。

ただ、ミズーリ州では彼らの関係は法律で認知されてはいない。

そして、アレンは重度のうつを抱えていて、月2回電気ショック療法を受けながらロジャーとその娘、アマンダに介護をされていた。

ロジャーは介護だけではなく、医療方針など、様々な面でアレンと共に大事な決断をしていて、彼らは行きつけの病院からも良く知られたゲイカップルだ。

一方、アレンの家族はうつのことも、彼がゲイであることにも理解を示していない。

だから、アレンは血の繋がった家族とは距離を置いている。

しかし、今週になってアレンは彼のパートナーから引き離されることになる。

火曜日、ロジャーが仕事から戻るまでの間、アマンダはアレンを介護していて。

アマンダが用事を済ませて家に戻ると、家の前にアレンの家族と警察が待っていた。

アレンの病状を理由に、彼の家族と警察はロジャーから彼を引き離したいと主張し。

アレンを日頃から介護していたアマンダの言い分に彼らは耳を傾けることもなく。

彼が行きつけの病院ではなく、カンザス市にある病院に連れて行った。

もちろん、これを知ったロジャーは急いでアレンが入院した病院に駆けつける。

病院にはアレンの兄であるリーがいて、これからはロジャーではなく、彼がアレンの医療方針の決断をすると主張し。

「彼は私の夫だ。私が常に側にいたし、彼が必要なものもよく理解しているのは私だ。君は彼の側にほとんどいなかったじゃないか。さっさと帰ってくれ。」

とロジャーは言い返し、そのまま彼らは口論になったため。

その場にいたナースは警察を呼び、ロジャーを強制退去させようとした。

意識が朦朧としていたアレンも「ロジャーにいてほしい」と主張していたのに。

そのナースはロジャーとアレンの関係性を確認しようともしなかった。

警察が到着してもアレンの側を離れなかったロジャーは力づくに彼を引き離した。

それでも抵抗したロジャーに警察に手錠をかけられ、床に押し倒された。

この警察たちの暴力的な行為で、ロジャーはメガネと補聴器をなくし、流血までする始末。

ロジャーがゲイだと知っていた警察は彼をHIV陽性だと決めつけ。

手袋なしではロジャーに触ろうともしなかった。

そのまま逮捕されたロジャーは3時間牢屋で過ごし、$600の罰金を払うことになった。

追い打ちに、彼はアレンに会いに行くことまでも制限され。

木曜日になるまでアレンに会うこともできなかった。

このニュースを昨日読んで、かなり唖然としたキャシー。

今日さらに詳しい情報を知って、凄く憤りを感じている。

英語が読める方は、アマンダのインタビューを読んでみて。

かなり詳しいところまで語っているわ。

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さらにムカつくことに、病院は責任を完全否定しているのよ。

この事件を聞いて、背筋が寒くなったのは家族や病院、警察の冷酷さのせいではない。

アレンとロジャーがここまで念入りに赤の他人ではなく、パートナーだと証明するように気を配っていたのに、それがいとも簡単に無視されたことだ。

たしかに、ミズーリ州では彼らは法律上パートナーではないが、ここまでしていれば男女のカップルは結婚してなくてもフツーは事実婚と認められているところだ。

結婚した夫婦と同じ権利はなくても、こうして病院を追い出されることはないはずよ。

「パートナー法があれば結婚はいらないよね。」

そんなことを思ってた時もあったけど、パートナー法ではこの社会のホモフォビアに立ち向かえないこともあるのよ。

本当は社会がもっと様々な形の生き方を認めてくれればそれが一番いいんだけど。

“家族”として認められるには、男女と同じ“結婚”をする必要がある。

老後、長年付き添ったパートナーがいた場合は特にこんなトラブルを防ぎたい。

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先日見た『Cloudburst(邦題:夕立ちのみち)』という映画も。

30年連れ添ったレズビアンカップルが実の家族に引き離されたくないがために。

アメリカからカナダまで旅して、結婚式を挙げるという話だったのよね。

アメリカで国家レベルで同性婚が成立すれば、こうしたトラブルも減るのだろう。

言うだけならタダだから言うけど、こんな悲しい事件は金輪際起きてほしくないわ。

同性婚は終点ではなく、通過点。

2 4月

ここ数週間、アメリカでの同性婚運動が一気に盛り上がってきた。

こんな赤とピンクのイコールの画像、ソーシャルメディアで目にしてない?

これもアメリカの同性婚支持のキャンペーンの一部よ。

あたしのツイッターも真っ赤に染まってるわ。

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ただ今、アメリカでは限られた州でしか同性婚が認められていない。

ニューヨークで結婚したゲイカップルも。

同性婚を認識していない州に引越せば赤の他人になってしまう。

これがなかなか厄介な状態で。

同性婚が国レベルで認められているカナダとは全然勝手が違って来る。

先月、ゲイポルノスターであるウィルフレッド・ナイトがパートナー共々自殺した。

Porn Star Wilfried Knight Commits Suicide After Long Battle With Immigration

 

一緒に暮らすために、アメリカからカナダに引越した彼ら。

移民問題や仕事のトラブルのストレスがピークに達しての自殺だった。

アメリカに同性婚があれば、こんな最後を迎えなくて済んだとも言える。

そんなアメリカでは、先週より最高裁判所で同性婚についての審議が行われていて。

これが無事に通れば、同性婚が認められている州で結婚したゲイカップルはそれが認められていない州でも結婚している扱いとなる。

いわば、国レベルで同性婚が認められている状態に非常に近くなるというわけだ。

そんなわけで、アメリカ中が大騒ぎとなっているのが隣のカナダからでも伝わって来る。

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同性婚を支持する人たちはアメリカ各地でもデモを繰り広げ。

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他人の結婚に首を突っ込みたいお節介な暇人も多く集まった。

アメリカの最高裁がどんな決断を下すのか、あたしも楽しみよ。

そんな同性婚論争が最高潮に達している中。

LGBTコミュニティの中からも様々な意見が上がっている。

辛口に社会問題をぶった切るブラック・ガール・デンジャラスのブログでは。

同性婚に気を取られている間にLGBTに影響する他の問題が見過ごされていると指摘した。

6 Things That Happened While Y’all Were Preoccupied With Gay Marriage
 

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アリゾナ州では出生証明書に記されている性別と一致した性別の公共トイレしか使えなくなるポリシーが通ってしまったことで。

トランスジェンダーの方にとっては、かなり大きな問題となると予想されている。

しかし、同性婚の盛り上がりでこの問題はすっかり存在感が薄くなっている。

さらに、最初に紹介した赤とピンクのイコールロゴにも問題を指摘する人が多い。

What’s Behind Criticisms of Those Red Equal Signs in Your Facebook Feed?

 

この記事では、アメリカの同性婚運動をリードしているHRC(Human Rights Campaign)が。

トランスコミュニティや他のLGBT問題を軽視している彼らの活動方針に問題を指摘している。

たしかに、結婚をイコール/イコーリティ(平等)と結びつけるのは違和感がある。

「男女は結婚できて、男性同士や女性同士が結婚できないのは平等じゃない。」

という理論もよくわかるんだけど、それでも結婚自体は平等とは程遠い。

そもそも、結婚とは社会を管理するシステムであって。

結婚している人としていない人の間に大きな溝を作る。

30代の独身女性がメディアから「負け犬」呼ばわりされたのは記憶に新しい。

結婚していないと一人前じゃないとか、婚活とか、もうそういうのも聞き飽きた。

結婚は、今の社会では家族単位で人間を管理するためのツールと化している。

人間は個人ではなく、家族になって初めて「社会」の一部になるという考えだ。

だから、結婚ができないと極めて不便となる。

それ故に、同性婚が必要とされる。

そして、同性婚が認められて恩恵を受けられるのは誰か。

それはきっと既に恵まれているミドルクラスのゲイやレズビアンだろう。

トランスコミュニティが受ける恩恵は少ないし。

LGBTユースの自殺問題や、LGBTの難民移民問題など。

その他の問題に圧迫されている人たちにとって、同性婚は恩恵があるのだろうか。

カナダでは2005年に同性婚が認められて以来、LGBT運動がかなり静かになった。

プライドパレードはデモ行進から単なるお祭り騒ぎに成り果て。

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大企業の広告としてもっこりお兄さんが意味なく踊るフロートが急増した。

「もうLGBTの市民権の戦いは終わった!」

そんなことを言い出す人たちまで現れる始末。

カナダでは今でもゲイという理由で殺される人がいるし。

LGBTユースが学校でいじめられて自殺をしているし。

家を追い出されてホームレスになる若者の数も減ってない。

トランスコミュニティのセックスワーク以外への就職率は絶望的に低い。

これでも同性婚がLGBTの市民権運動の終点だと本当に思えるなら。

きっとその人は凄く恵まれているんだろう。

もちろん、同性婚がいらないというわけではない。

同性婚はとても大切な法制度だ。

例えばあたしのパートナーが亡くなったとして。

同性婚があれば、彼の最後を病院で家族として見届けられる。

同性婚があれば、遺産相続でトラブルにならなくて済む。

パートナーの家族にお金が家を取られて、一文無しになる心配も少なくなる。

同性婚は人生の選択肢を大幅に広げてくれる法制度である。

ただ、これほどまでに同性婚獲得にお金や労力をつぎ込むことに疑問を感じる。

もしこれでアメリカに同性婚が認められた日には、ネット上に結婚をするミドルクラスの同性カップルたちの写真が溢れ、そのままLGBT問題は忘れられてしまうのか。

有色人種のLGBT、トランスコミュニティ、LGBTユースの自殺問題、障がいを持つLGBTなど、彼らの問題は彼らで勝手に解決しろとなるのか。

正直、そんな未来が一番現実的で悲しくなる。

平等を声高に叫んでいる人たちも、同性婚より先にある平等には興味がないのかもしれない。

同性婚はあくまで通過点であって、終点ではない。

その赤とピンクのイコールロゴの意味。

同性婚の意味。

LGBTの市民権の意味。

もう一度ちゃんと考えないといけないのかもしれない。