トロントのハッテン場キング(凄い称号ね)であるピーターが先日亡くなった。
Toronto’s bathhouse king, Peter Bochove, dead at 65
キャシーが以前仕事でよく訪れてたハッテン場のオーナーでもあった彼。
実はトロントの同性愛運動に大きく貢献したアクティビストでもある。
トロントのプライドパレードは警察によるハッテン場摘発への反抗から始まった。
一晩で300人もの人が逮捕されたハッテン場摘発の夜。
当時もハッテン場オーナーだったピーターはタオル一枚で警察に対応した。
警察による摘発でハッテン場は破壊され、営業停止を余儀なくされた。
偏見に満ちた差別的な警察の行為で多くの男性の唯一の居場所を奪われ。
レズビアンやトランスコミュニティも巻き込み。
2月という寒い時期に大規模なデモ行進がトロントの街に沸き上がった。
そのデモ行進が今では北米でトップレベルの祭典、プライドパレードになった。
「みんな肌晒して踊っちゃってプライドって痛いわ。退屈しちゃう。こんなつまんないイベント来なきゃよかった。」
とか言ってるストレートの方とかたまにいるけど。
そもそもあなたを楽しませるイベントではないのでね。
地球がいつもあなた中心に廻ってると思ったら大違いよ。
意味が薄れつつあるプライドパレードでも、その歴史は忘れないでほしいわ。
そんなピーターさんとは数回一緒に仕事をさせてもらったけど。
気さくでユーモアがあって楽しい人だったわ。
本当に、トロントは惜しい人を失った。
彼のレガシーであるハッテン場、SPA EXCESSはせめて末永く生き残ってほしい。
仕事でSPA EXCESSに来た楽しそうなキャシー(↓)
ちょっと前置きが長くなってしまったけど。
今日は少しプライドパレードの話でもしようと思うのよ。
ほら、先週東京レインボープライドだったじゃない?
今年のパレードには2100人以上が歩き、12000人がイベント自体に参加し。
例年以上に団体や企業、そして大使館がブースを出してサポートを表明した。
ある意味、トロントのプライドの方向に進み始めたようにも見える。
今年は一時帰国できず、パレード参加できないキャシーは肉棒(指)を咥えながら、ツイッターで楽しそうにマーチをしている方の写真も見ていた。
当時に、今回のパレードに関する反応も追っていたわけよ。
ほら、イスラエル大使館も公式参加しちゃったでしょ?
一部のメディアでは手放しにスポンサーやパートナーの増加を喜んでたけど。
「在日でゲイ」のハルキさんの『日本のゲイパレードのあり方』という記事なんかを筆頭に、この件を喜べない方も多かったのよ。
イスラエルと東京レインボープライドの繋がりがよくわからない方はキャシーが昔書いたこちらの記事を読むことをおすすめするわ。
パレスチナ問題とゲイの人権の意外な繋がり。
イスラエルは本当にゲイの人権を尊重しているのか。
東京レインボーパレードのセレモニーではイスラエル大使館も公式にスピーチをしたようで、その際に参加者の中には反イスラエルの抗議サインを掲げる人もいたらしい。
マサキチトセさんが書いた『Read before you write about LGBT politics in Japan(英語よ!)』という記事でも、今年の東京レインボーパレードを鋭く批判している。
そんな賛否分かれる東京レインボーパレードの方向性について。
そのまま先に進めばいいのか。
ここで方向性を見定めるのか。
運営に携わる方はぜひ時間をかけて考えてほしい。
先ほど方向性が似ていると言ったトロントのプライドだけど。
年を重ねるごとにデモ運動からお祭り騒ぎに変わって行き。
今では大人気な観光イベントと化してしまった。
それが良いか悪いかという話はまた別の機会にして。
そんなトロントプライドは、企業スポンサーや資金提供をしてくれるトロント市に媚びるようになり、コミュニティがすっぽり抜け落ちた状態になった。
もちろん、そんなことで黙っているLGBTコミュニティではなく。
数年前にはイスラエル問題で危うくプライドがキャンセルされるところだった。
一連の事件をまとめた当時の記事はこちら。
ゲイプライドは、誰のもの?
パレスチナ支持の反イスラエルLGBT組織へのトロントプライドパレード参加禁止令。
ゲイパレードの精神とトロントプライドの戦い。
反プライドトロントのキャンペーン。
プライドトロント2010年幕開け!
ここ数年ずっと反イスラエルクィアグループの参加の是非を巡って、トロントプライドの土台はグラグラ揺れている。
この反イスラエルクィアグループ(Queers Against Israeli Apartheid)には、数多くのクィアアクティビストが在籍していて。
イスラエルによるパレスチナへの攻撃や。
イスラエルの政治的目的によるLGBT支持を批判している。
トロント市は2010年にプライドトロントに対して、このグループの存在が「ヘイトスピーチ」にあたるため、彼らの参加を拒否するように要請した。
多くの企業スポンサーも彼らを目の敵にし、彼らがプライドに参加すれば、プライドトロントへの資金提供を金輪際しないと表明した。
一方、多くのコミュニティメンバーはプライドは政治的なものであるし。
誰にも反イスラエルクィアグループの参加を拒否する権利はないと主張した。
「市やスポンサーからの資金提供がなくてもプライドはできる!」
とヤル気になったコミュニティはこんなオーガニックなパレードも企画した。
こんな状況下で規模が肥大化したプライドを運営する側も気の毒なのだが。
彼らは2010年にコミュニティから大批判されたのをきっかけに変化も見せている。
今年もあと2ヶ月までトロントプライドが迫ってきているんだけど。
やはり反イスラエルクィアグループがニュースを賑わせている。
4月にトロント市が「反イスラエルクィアグループは市の規則に反していない」という公式声明を出しているにも関わらず。
右翼でユダヤ系市議員であるJames Pasternakはしつこくこの問題を追求し。
「反イスラエルクィアグループのプライドへの参加を拒否すれば、プライドトロントにボーナスを渡そうではないか」
とこのような問題発言まで公式で言い放ったのよ。
ねぇ、それって賄賂じゃないの?
2010年に市の要求を鵜呑みにしたプライドトロントも、今回ばかりは。
「たとえボーナスをもらおうと、何も問題のないグループの参加を拒否することはできない!」
と、きっぱり応対した。
そんな泥沼なトロントプライドを追いかけたい人はこちら。
Pasternak offers Pride ‘diversity bonus’ if it excludes QuAIA(英語よ!)
と、ここまでダラダラ長く書いてしまったけど。
最後に結論というか、要点をまとめるわ。
プライドパレードは本来政治的なものなのよ。
社会の不平等や権力や筋の通ってないことへの批判なのよ。
権力を振り回し、LGBT支持を道具にする政府が存在感たっぷりだったり。
プライドにブースを出す一方、労働者を人扱いしない企業が主役顔だったり。
そんなことではせっかくのプライドが矛盾してしまう。
だからこそ、ゲイやLGBTという枠ではなく、広く深く問題意識を持つべきだと思うのよ。
トロントの肥大化したプライドに比べて、東京のプライドはまだまだ成長中。
コミュニティからの声が届いて、東京らしいプライドに育って行くことを願ってるわ。
キャシーもコミュニティで働く身だから、こんな規模の大きいイベントをほぼボランティアだけで運営する大変さはよく知っている。
こうして東京にプライドパレードがあることにも感謝したい。
来年は是非、あたしも参加したいわ。
語りすぎたので、今日はここまで。