キャシーの日々ハッテンは、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。
キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.85 中学生にコンドームをあげるべきか
珍しく中学生向けに性教育を頼まれて、「中学生ってどんなだったっけ」と過去を振り返りながら教室のドアを開けると子供達が座っていた。思春期を迎えた中学生の自分を思い出すとずいぶんオトナのように思えたが、アラサーになった自分から見た中学生たちは思いの外幼かった。授業の終わりに配ろうとコンドームを持ってきたのに、配っていいのか躊躇ってしまった。「今日コンドーム持ってきたんだけど、これ配っていいの?」目の前に座っている生徒に聞いてみる。キラキラ目を輝かせた彼らがコンドームを欲しがらないわけがなく、まったく当てにならない。隣のクラスで性教育を教える先生に聞くと、中学生には早いという。性教育のイベント企画者に聞くと、全然問題ないという。いったいどっちなのかわからず混乱する横で、「コンドームちょーだい」と必死におねだりする中学生の集団。キャシー大ピンチ。
中学生といえば子供とオトナの間を彷徨う曖昧な年頃で、セックスに手を出してしまうことも珍しくはない。オトナがいくら情報を遮ったって、彼らは興味があれば探し出す。だから、取り返しのつかないことになるよりは、コンドームを渡して使用法もしっかり教えるべきだと思っている。しかし、中学生にコンドームを渡して彼らがそれを家に持ち帰れば、保守的な家庭から苦情が来る可能性が出てくる。そうやって性教育自体が問題視されるリスクもある。実際、そうしたバックラッシュは世界各地で起きている。そして、苦しむのは性感染症にかかったり、妊娠する子供達だ。
結局、学校側から許可をもらって、やっとの思いで待ちわびる生徒達にコンドームを手渡すと、彼らは「水風船バトルだぁ!」と叫びながら走り去った。止めることはできそうにないので、「コンドームで作った水風船はなかなか割れないから痛いぞ!」と大声で忠告してあげた。