セックス・アンド・ザ・キャシーは、LGBTのためのコミュニティサイト『2CHOPO』(にちょぽ)に2014年から2017年まで連載されていたコラムです。

セックス・アンド・ザ・キャシー(コラム連載アーカイブ)
第9回、同意のないセックスはセックスじゃない
セックスコラムを書いているのにも関わらず、とても地味なセックスライフを送っているあたしは過去の経験を引っ張り出す以外道がない。さて、ネタはいつまで続くのだろうか。こんなことなら、もっといろいろやっておくべきだった。今回もまた遠い昔の話を紹介しよう。
ハッテン場のジャグジーに浸かってジェット水圧を密かに楽しんでいたら、タイプのイケメンが隣に座った。水面下でお互いの肌と肌が触れ合うと、すぐにキスが始まった。周りにはいつのまにか見学者が集まっていた。「個室あるから、そこで続きをしようよ?」彼に手を引っ張られて、ワクワクしながらハッテン場の個室に入った。シングルベッドとミニテーブルがやっと収まるくらいの小さい部屋は少し息苦しかった。
ベッドの上で横になると彼は上に乗っかってきた。ますます上がるテンション。これは思い出に残るセックスになりそうだ。そう思った瞬間、彼はコンドームなしで挿入しようとした。素早く手でそれを止めて、「何してるの?」と少し冷めた口調で聞いた。「入れようとしたけど?」と彼が少し呆れたように答えた。「コンドームしないならしないよ」と頑な自分に対して、向こうは「いいじゃん」とせがみながら何回も挿入を試みる。もうすっかりアソコも気持ちも萎えて、彼を押しのけて個室を出た。振り向き様に見えた彼は舌打ちをしていた。皮肉なことに、予想通りに思い出に残るセックス未遂となった。あの時、そのまま彼にせがまれてセックスをしたとして、それはセックスと呼べたのだろうか。
セックスをする上で、同意を得るという行為はとても大事なことである。いや、むしろ同意は絶対に必要だ。ロマンティックなデートの終わりに、顔と顔が段々と近づいてきた頃。「ねぇ、キスしてもいい?」と聞いて、同意を得てからキスをする。セックスの最中に、「どう?」「気持ちいい?」「痛くない?」と相手を気にかける。相手がダメと言ったり、嫌がった場合はすぐに止める。これはもうベーシック中のベーシックである。
しかし、悲しいことにそんな簡単なことを理解していない人が多すぎる。相手が何も言わなければ、何をやってもいいと思っている人。相手にたくさんお酒を飲ませて、酔った勢いならやってもいいと思っている人。自分の恋人だからって、いつでも自分がやりたい時にやれると思っている人。相手に嘘をついて、コンドームなしで挿入してもいいと思っている人。相手が嫌だと言ったら、「僕のこと愛してないの?」「私が嫌いになったの?」と感情的な言葉を使って相手の同意を得てもいいと思っている人。そんなのは決して同意ではない。それでセックスをしたところで、それはセックスではなくレイプである。
「それじゃ、レイププレイはどうなるの?」同意の話になると必ずこの話になるが、それとレイプはまったく別ものである。レイププレイ、縛りプレイ、SMプレイなどを楽しむ場合、事前にどういったことをやるのか話し合ってルールを決めることから始める。万が一プレイの最中に誰かが嫌になった場合、すぐに止められるようにセーフワードやセーフジェスチャーも決めておく。数え切れない同意とコミュニケーションがあって初めて、レイププレイが成り立つ。
相手の同意を得るのが苦手な人は、自分に自信を持てないことが多いという。相手から拒絶されるのは、たしかにダメージが大きい。だからといって、相手の同意なしに自分のやりたいことを強要するのは許されない。セックスをする前に、まずは相手に嫌だと言われても怯まない広い心を養おう。この行為がダメと言われたら、また別の行為を試してみればいい。試行錯誤するのはセックスの醍醐味だ。自分とセックスをしなくないと言われたら、また別の人を探せばいい。誰にだって好き嫌いはある。気にする必要はない。一番大事なのは、同意のないセックスはセックスじゃないってことをアソコにしっかり刻んでおくことだ。