「男のくせに泣くな」と言われて

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.84 「男のくせに泣くな」と言われて

久しぶりに『魔女の宅急便』を見て、遠く離れた街で頑張るキキの姿に自分を重ね合わせて目がうるうるしていた。エンディングで号泣しそうになったところで、心の中のどこかから「男のくせに泣くな」という声が聞こえて、ぐっと涙をこらえた。泣きそうになるといつもこうやってブレーキがかかる。物心がついた時から、事あるごとに「男のくせに泣くな」と言われたのを覚えている。両親、親戚、友達、同級生、学校の先生と、身の回りの人はみんなそう言っていた。男泣きという言葉があるくらい、社会の中で男は滅多に泣くものではなかった。男が何なのかもよくわからない年頃に、「男のくせに」と言われても戸惑うだけだった。男が泣くのがなんでいけないのか、誰も納得のいく説明をしてくれなかった。しかし、オトナになるに連れて周りを気にして泣くのをこらえるようになった。いくら痛くても、いくら苦しくても、いくら悲しくても、「男だから」泣かないように耐えた。父の葬式でも泣かなかったし、思い切り失恋した夜も泣かなかった。少なくとも人前ではタフを気取った。この年になって、「男のくせに」なんていう考え方がどれだけ無意味なのかよくわかったものの、いくら頭では理解しても泣くことをこらえる癖は身に染み付いていた。

自分より年上のゲイの先輩も同じ悩みを抱えている。「泣きたいときに泣くのは心に優しい」と考える彼は、週に数回泣く練習をしている。ネットで泣ける動画を見つけては、ティッシュ片手に声を出して泣くらしい。一人で泣く姿を想像すると少し可笑しいかもしれないが、たしかに心のデトックスになってスッキリしそうだ。男でも、そうでなくても、いつも強がっていたら疲れてしまう。誰だって泣きたくなる日がある。誰かに感じることを否定される筋合いはないのだ。そんな時は思いっきり泣けばいい。きっと少し楽になる。

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