キャシーの日々ハッテンは、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。
キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.72 手を繋いで歩くゲイカップルを見るとホッとする
街中を歩いていると、たまに手を繋いで歩くゲイやレズビアンのカップルとすれ違うことがある。その微笑ましい姿を見ていると、なんだかこっちまでホッとする。ダウンタウンから外れた場所でそんな光景に出会えば、砂漠の中でオアシスでも見つけたかのように感じるから不思議だ。
トロントはゲイフレンドリーな街として知られているが、ゲイにとって歩きたくないエリアもある。ダウンタウン、特にチャーチストリートなら男同士で手を繋いで歩いたって何も言われることはないが、一歩踏み出せば睨まれたり、暴言を吐かれたりすることもある。もちろん、「ラブラブしてんじゃねーよ」という類いのものではなく、「ゲイは気持ち悪い」とか「ゲイは地獄に落ちる」である。世界でトップクラスのプライドパレードを開催する街でもこうだ。たまに一人で歩いていると、ゲイと思われて絡まれたらどうしようと不安になったりする。それを被害妄想と呼ぶ人もいるが、実際にカナダではゲイという理由で暴行されたり、殺されるというヘイトクライムが毎年発生している。だからなのか、街中で手を繋いでいるゲイやレズビアンのカップルがより一層輝いて見える。彼らが手を繋ぐ行為はただの愛情表現ではない。「私たちはここにいる」と差別や偏見を押し退けて、自分たちの存在を周囲に主張しているのだ。少なくともあたしは勝手にそう思っている。そうやって堂々と歩く姿にはとても励まされる。彼らは知らないうちに小さなプライドパレードを開催しているのだ。
自分の彼氏と歩いているとき、特にゲイフレンドリーではないエリアでは勇気を出して手を繋ぐようにしている。そうしていれば、世界はもっとゲイフレンドリーになっていくと楽観的に考えている。絡まれたときは全力で逃げられることを祈りながら、今日もビクビクしながら誇らしく歩いている。