キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第25回、職場でカミングアウトするメリット
「仕事先でゲイだって言っちゃった」と転職したばかりの彼氏が嬉しそうに報告してくれた。ゲイに寛容なトロントといっても、職場でカミングアウトをしない人は多い。個人的なことは職場で語らない人もいれば、保守的な職種でカミングアウトしにくいというケースもある。極めて珍しい例だが、ゲイを相手にする仕事ではカミングアウトが前提だということもある。規模の小さいベンチャー企業でソフトウェア開発をしているうちの彼氏の場合、職場にリベラルな人が多いのでカミングアウトしやすかったようだ。彼がゲイだと知った同僚たちは「うちの会社はみんなゲイフレンドリーだから安心して」と口を揃って言ったらしい。
カナダの人権擁護法にはセクシュアリティが含まれているため、ゲイという理由で解雇ができない。しかし、会社にゲイ嫌いな同僚や上司がいては仕事がしにくいのは変わらないので、積極的にゲイフレンドリーな環境を築くことに力を入れている企業も多々ある。性の多様性への理解を深めるセミナーを社員に提供したり、社内でゲイ向けの懇親会を開催したり、ゲイパレードのスポンサーになったりと取り組みは様々。某有名銀行に勤める友人のレズビアンカップルは、会社で知り合ってオープンに社内恋愛を実らせた。自分らしくいられる仕事先では社員のモチベーションも上がることから、そういう意味では企業にとってもプラスである。少しせこいかもしれないが、個人的に会社でカミングアウトする最大のメリットは福利厚生だ。自分のパートナーを登録すれば社会保険をシェアできて、マッサージや歯医者などのサービスを無料で受けられてとてもお得だ。
アップルのCEOであるティム・クックがオープンリーゲイだったり、モジラのCEOが過去に反同性婚運動に寄付したことで辞任させられる時代、職場でのカミングアウトに悩む必要もそう遠くないうちになくなると信じたい。