ビタースイートなバレンタインデー

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.63 ビタースイートなバレンタインデー

今年もバレンタインデーの季節がやってきた。話題のレストランのメニューを見比べてはよだれを垂らしているキャシーは、肝心のデートよりもバレンタインデー限定のコース料理が楽しみでしかたがない。しかし、こうして2月にワクワクしている自分を今でも新鮮に感じる。

高校生の頃、バレンタインデーといえば悪夢でしかなかった。恋人がいなかった自分にとって、どこもかしこもカップルムードに包まれるこの季節はとても孤独だった。テレビを見ても、街中を散歩しても、目に入ってくるのは男と女がラブラブしているイメージばかり。唯一楽しみだったのは、バレンタインデーが終わってからセール棚に並ぶチョコレートだけだった。独身というだけでこんなに辛いバレンタインデーなのに、ゲイにとってはより一層心の穴をほじくられる日だった。「キャシー彼女はいないの?」と頻繁に聞かれるバレンタインデー付近は、ゲイであることを隠すだけでどっと疲れた。「なんで彼女いないの?まさかキャシーってゲイ?」なんて言われた日には顔を真っ赤にして「ゲイなんて気持ち悪い。そんなわけないだろ!」と誤摩化した。そうやって自分自身を否定するのは凄く苦しかった。だから誰も見ていないところで世界を恨んでは、一生バレンタインデーを楽しむことはないと心に誓った。

それが10年経った今ではバレンタインデーに彼氏と堂々と手を繋いでレストランでディナーを楽しんでいる。正直、バレンタインデーは今でも好きではない。もう世界は恨んでいないが、カップルを祝福する日よりも独身の素晴らしさを祝う日の方が必要だと思っている。それでもバレンタインデーの夜にデートへ出かけるのは、ゲイカップルの存在をこの世界に見せつけながら、美味しいコース料理を食べたいからよ。

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