多文化共生とセクシービーム

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.62 多文化共生とセクシービーム

週末の夜、友人と集まってお気に入りのレストランでディナーを楽しんでいると、隣の席に座っていた白人男性がシャツの端っこでお箸をきゅっきゅ拭いている姿が目に入った。少し驚きながらも無視をすることにしたが、やっぱり気になる。目を戻せば彼はお箸を乳首に当ててモーニング娘。顔負けのセクシービームを放っていた。次第に不快感が募りつつも、見て見ぬ振りして自分の目の前の食事に集中するあたしはとてもトロント的だ。

こんな些細なことだが、改めて多文化共生の難しさを痛感した。例えば、職場でランチに納豆を食べる人がいて、納豆に馴染みの無い人がその臭いを不快に感じて、話し合うことになったとしよう。「臭いの強い食べ物を公共の場で食べるべきではない」という人もいれば、「納豆は私の文化だから否定される筋合いはない」という意見が出てくるだろう。しかし、どちらが正しいかなんてそう簡単には決められない。先日、ヨーク大学で宗教を理由に他の女性のクラスメイトとグループワークができないと学校側にリクエストした男子生徒のケースはもっと複雑だ。宗教を尊重するのか、それとも女性の尊厳を優先するのか、大学内でも大きく意見が分かれた。ゲイを許さない宗教とゲイの人権問題など、同じ類いの議論はトロントに多く存在する。多様の文化や価値観を全部尊重すればみんなで手を繋いで幸せに暮らせるほど、実際の社会は甘くはない。文化が集まれば、価値観同士が矛盾し、対立することは免れない。多文化共生というのは、そうした問題を対話を通して解決していくプロセスなのかもしれない。しかし、どうしても譲れない立場からお互いに歩み寄るのは並大抵のことではない。確かなことは、見て見ぬ振りを続けても何も変わることはないということだ。

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