キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第20回、ゲイヴィレッジとレズビアンビル
トロントのゲイタウンは実はゲイヴィレッジと呼ばれている。東京のゲイタウンである新宿二丁目といえばバーやクラブが所狭しに並ぶ眠らない通り。しかし、トロントのゲイヴィレッジは生活感たっぷりな地味で物足りない通りである。ゲイバーやゲイクラブも数件あるにはあるが、肉屋から花屋、薬局、お茶屋、スーパーまで堂々と本通りを陣取っている。それもそのはずだ。ゲイヴィレッジには学生からお年寄りまで多くのゲイとそうではない人が暮らしているため、バーやクラブだけでは生活がままならない。ここは夜に遊びに来るだけの場所ではなく、実際に生活をするコミュニティである。だからこそタウンではなくヴィレッジなのだ。ブランチでお腹を満たして、ハッテン場でケツを満たして、帰りにスーパーによって冷蔵庫の中も満たせるのがトロントゲイヴィレッジスタイル。もちろん、メリットばかりではない。生活感がありすぎるせいか、ついだらしない格好でコンビニで買い物しようとして、さっきまで出会い系アプリでチャットしてた相手とばったりなんてことだってよくある。油断も隙もあったもんじゃない。
そんなトロントのゲイヴィレッジは順調に増殖している。20年ほどの歴史があるチャーチとウェルズリー周辺を筆頭に、クイーン東部に位置する年上のレズビアンやゲイカップルに人気のレズビアンビルや、クイーン西部にあるオシャレでアート志向な若者ゲイが集まるクィアウェストと、とてもバラエティ豊か。一方で、ダウンタウントロント全体がもう既にゲイヴィレッジだと言う人もいる。確かに、どこを歩いてもゲイを見かけない日はないほどゲイ人口密度は高い。トロントのゲイヴィレッジを見て「これだけ?」と驚く人も多い。たしかに、新宿のような華やかさはないが、住んでみてやっとわかる味のある場所でもある。