キャシーの日々ハッテンは、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。
キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.54 ジェンダーフリーのトイレが増えている
初めて訪れる噂のカフェで午後のラテを楽しんだ後、用を足そうとトイレに行けば真っ白なドアが二つしかない。いつもなら必ずある青い男性と赤い女性の標識がどこにもない。少し戸惑ってから、いつも通りに中に入ってすることを済ませた。なんのことはなかった。こんな風にジェンダーの標識がないトイレが最近トロントで増えている。特にトレンディーなレストランやカフェでは進んで導入しているところが多いという。もちろん、増えているといってもその数はまだ多くない。
トイレといえばあまりに身近なスペースであるから、こうしたジェンダーフリーに対する意見も様々。「標識がないとどっちに入ればいいかわからない」と真剣に悩んでしまう人もいれば、「個室のトイレならともかく、複数の人が入れるトイレがジェンダーフリーではセクハラが不安だ」と考える人もいる。自分の性別がはっきりしていれば、味わう悩みではないのかもしれないが、トランスジェンダーの方にとってはトイレに入るだけで多くの障害に出会う。まず、男性用と女性用のどちらに入るかで悩み、女性用に入れば他の女性から何か言われるんじゃないかと不安になり、男性用に入れば最悪暴行される可能性もなくはないのでおちおち用も足せない。彼らにとって、ジェンダーフリーのトイレはある意味安心して入れる数少ないスペースである。
実際、自宅のトイレでは男性用と女性用で分けることなんてしない。ジェンダーフリーの公衆トイレに出くわしても普通に使えばいいだけのこと。ただ、男性用トイレは女性用と比べて汚いことが多いので、特に男性諸君、ジェンダーフリーのトイレを使用する際はリスペクトを持って綺麗に使うこと。