週末、お気に入りのカフェで買ったデザートをぶら下げて、トロントのスカイラインを一望できるリバーデール・パークにやってきた。空には雲ひとつない。日の光に照らされた木々はいつもより鮮やかに輝いている。ピクニックを楽しむ人たちの側を通り抜けながら、待ち合わせをしている友達を探す。トロントは新型コロナウイルスによる第三波がやっと落ち着いて、昨年の10月から続いたロックダウンがやっと終わった。夏のトロントは毎年活気に満ちているが、今日はいつも以上に解放的なエナジーに包まれている。きっとみんな嬉しいのだろう。やっと長いトンネルの先に光が見えてきた。
プライド月間だからか、同じような格好をしたゲイたちが至る所にいる。ロックダウン中、ゲイバーやコミュニティセンターに行けなくなったことで、ゲイヴィレッジからそこまで遠くないリバーデール・パークは新しいゲイ・デスティネーションに生まれ変わったようだ。おかげで、自分の友達を見つけるのに時間がかかってしまった。パンデミック中もゲイたちのファッションの好みは変わらなかったらしい。友達から少し離れた場所にピクニックシートを広げて、マスクを外した。既に二回目のワクチンを済ませた友達たちはすぐにスペシャル・ドリンクを作ってくれた。「長い冬をサバイバルしたぞ！」と、みんなでワイングラスを掲げた。自分も二回目のワクチンを済ませいてたら、もっと近距離で乾杯したかった。
こうやってゲイ友達で集まって、周りにもたくさんゲイがいれば、流石にテンションも上がる。それが八ヶ月間のロックダウンの後で、こんなにも天気が良いと、自然と肌が露わになってしまう。レインボーフラッグも飾って、大音量のスピーカーから流れるのはリリースされたばかりのカイリー・ミノーグによる「Marry The Night」のカバー。（ちなみに、Lady GagaのBorn This Wayから10周年って、全然実感ないわ！）あまりにゲイゲイしい空間が出来上がって、注目の的となってしまった。「ちょっと恥ずかしいね」なんて言いながら大声で爆笑するあたしたち。この感覚、本当に久しぶりである。周りを見渡すと、ミュージック・チョイスは好評なようで、一緒になって腰を降ってくれる仲間たちもいた。このゲイ特有の連帯感はいったい何なのかしら。
もちろん、こんなに公共の場でゲイアピールをしていればゲイが寄ってくる。「久しぶりっ！」という声の方を見れば、友達の友達のようだ。しかも、めっちゃイケメン。床屋も美容室にも行けないのに、髪の毛がとても美しく決まっている。一年三ヶ月続いたパンデミックは交友関係にも大きな影響を及ぼして、非常に限られた友達としか連絡を取っていない。新しい友達と出会うこともなく、すっかり内向的な側面を極めてしまって、こんな時にどう挨拶すればいいのかわからず挙動不審になってしまう。セルフカットのひどい髪型を見られたくないのもある。何はともあれ、昔の社交的な自分を取り戻すにはリハビリが必要なのかもしれない。こんなイケメンと楽しく話せないなんて悔しいわ。
空がオレンジ色に染まった頃、ピクニックは自然とお開きとなった。楽しい時間はあっという間に過ぎて行くが、今日はいつも以上に速かった。ゲイヴィレッジに戻って夜遅くまで飲む予定の友達に参加したかったが、それは二回目のワクチンを終えるまで我慢しよう。平和なゲイの日常を過ごせただけでも大満足だ。正直なところ、パンデミックが始まってから、心のどこかでこんな日常は戻らないかもしれないという不安があった。ドラマクイーンだから大袈裟なのよ。だから、友達と時間を共有できたことでそんな不安もかき消してくれた。パンデミックはまだ終わったわけではないし、問題も山積みである。それでも、こうやってゲイライフをほんの少し取り戻せたのは大きい。これでまだまだ頑張れる！
ちなみに、ロックダウン中に時間に余裕があったので、ずっと先延ばしにしていたブログの引っ越しを終わらせたわ。こんなに時間がかかってしまって本当にごめんなさい。そして、今まで連載してきたコラムもアーカイブとしてまとめたわよ。「キャシーの日々ハッテン（まだ終わってないわ）」も、「キャシーのトロント不思議ハッテン」も、「セックス・アンド・ザ・キャシー」も、アメブロ時代のブログも、全部ここで読めちゃう。13年の間に書いたコラムとブログポスト総数はなんと800以上！もしも暇で何もすることがない時は、ぜひ「トロントにハッテン車窓から」に遊びにきてちょーだい。
トロントのハッテン車窓から 