コミュニティの絆を育むのは大切だ

「月曜日からリモートワークになるかもしれない」

昨年、まだトロントが新型コロナウイルスでロックダウンに入る前、上司からチームがリモートで働けるように今すぐコーディネートしてほしいと頼まれた。まだ使ったことがなかったZoomのラインセンスを取得し、急いでみんなでバーチャル会議ができるようにインストールした。オフィスで育てていたサボテンやロッカーの中にあるお菓子も全部持ち帰った。その日からまだオフィスに足を踏み入れていない。金曜日の午後の緊急事態でとても動揺したのをよく覚えている。物凄く焦っていたので、毎朝使っていたコーヒー豆グラインダーはオフィスに忘れた(おかげでずっとインスタントコーヒー飲んでる)が、チームと別れを告げる前に一つ提案をするのは忘れなかった。

「これから実際に顔を合わせないなら、毎朝30分、チームのための挨拶の時間を作ろう」

うちのオフィスはオープン設計。毎日好きな席に座って仕事ができて、同僚との距離感も近い。カジュアルな雰囲気で、仕事中の意見交換も頻繁だ。だから、バーチャルなスペースで仕事するようになれば、挨拶や会話の機会も失ってしまうのかもしれない。それを心配して、とりあえず思い付いたことを提案してみた。

昔、コミュニティ・スペースで勤めていた頃、ボランティアたちと会議を始める前にチェック・インをするのが習慣だった。チェック・インはお互いを知り合うきっかけを作るのが目的で、「今日はどんな気分か」や「ピザのトッピングで何が好き」とか会議とは無関係の話をする時間である。二時間の会議なのにチェック・インだけで30分もかかるのも珍しくない。それは無駄ではないかとよく指摘されたが、長い目で見ると実は大切なのだ。

例えば、LGBTのスペースならば、参加者にとってその会議が唯一のセーフスペースであることも多く、自分の経験を共有することを通して気分が楽になる人も多い。さらに、こうやってお互いを知る機会を重ねていくことで、グループの人間関係も育って、お互いを助け合う絆もできる。それがモチベーションとなって、よりコミュニティに貢献しようと活動するようになる。効率ばかりを重視していたら、絆も深まらないし、ボランティアたちも無関心になってコミュニティを離れてしまう。

振り返れば、コミュニティやアクティビズムの活動に関わるようになったのは、友達(それとデートの出会い)のネットワークがどんどん広がったからである。みんなで必死に活動して、必死に遊んで、たくさんの時間を共有できた。カミングアウトしたばかりだった頃、トロントに来たばかりの頃、そうやって人間関係を育む機会があって本当に救われたし、今の自分がいる。活動を通して出会った友人とも長年の付き合いになる。彼らから連絡が来れば、仕事と学校がいくら忙しくても時間を作って出来る限り貢献している。

自分より若いアクティビストから話を聞けば、最近はコミュニティの活動でも効率重視になっている傾向らしい。私の世代が学生の頃は、学費も家賃もずっと安かったからある程度余裕があった。しかし、今のトロントは比べられないほど物価が高騰している。活動に励んでいる若い人たちは複数の仕事を掛け持ちしていたりする。そうなると、貴重な時間をなかなかチェック・インに費やせないし、活動の後にみんなで遊びに行く機会も減る。それは非常に残念だ。

うちのチームもチェック・インには慣れていなかったが、いざリモートワークが始まると朝の30分間の挨拶の時間が大好評となった。パンデミック初期の不安を共有できたのはもちろん、毎朝みんなで話をする機会があるおかげで、オフィスで働いていた頃よりチームの絆が深まった。飽きたら回数を減らすか止めようと計画していたが、もうすぐ一年経つ今でも継続しているし、まだ飽きる気配がない。ここまでインパクトがあったのには自分も驚いた。こんな時だからこそ、人間関係を育む機会を作るのは大切なのだろう。

また活動をするようになったら、チェック・インの重要性をもっと広めなくちゃね。

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