職場のクローゼットと、オープン・リレーションシップ

「週末どうだった?」

こんな質問を月曜日の朝に同僚に聞かれるのはわかってるので、いつも無難な答えを事前に用意している。ゲイとしてクローゼットの中で生きてきた思春期のおかげで、プライベートな出来事をフィルターにかけて、共有したくない部分を編集するのは慣れている。

職場ではゲイだとカミングアウトしている。しかし、オープン・リレーションシップの方は誰にも言っていない。今年で交際10年になるパートナーとは、6年前よりオープン・リレーションシップ(同意の上で、恋人以外の人とセックスやデートができる関係)を始めた。自分にとってはもう日常すぎて、たまにそれに批判的な人がいることも忘れてしまう。

仕事に関係ないんだから言わなければいい。そう言うのは簡単だが、同僚と親しくなるほど、距離感を取るのが難しくなる。「キャシーってプライベートな話になると無口だよね」とか言われると、笑って誤魔化すしかない。最近は「Be your authentic self at work(職場でもありのままの自分で)」みたいなスローガンが流行ってるが、「週末はパートナーじゃない素敵な相手とお泊まりデートだったの」と同僚に話したらどんな反応をされるのだろう。

学生時代のアルバイトは除けば、今までの職場ではずっとゲイとしてオープンに働いてきた。最初の職場(HIVの予防啓発団体)では同僚もゲイで、性教育に関わっているので、コーヒーブレイクはセックス話やその考察について熱く語ることが珍しくなかった。オープン・リレーションシップやポリアモリーの話でもよく盛り上がった。次の職場(大学の研究センター)では、ゲイの同僚が一人しかいなかったが、自分の担当がゲイコミュニティへのアウトリーチだったので、相変わらずゲイに囲まれていて開放的だった。その次の職場(ダイバーシティオフィス)では反差別や多様性の専門家が中心のチームだったで、同僚にゲイやトランスの方もいたが、流石にセックスの話は控え流ようになった。今の職場はとても多様で、同僚とも親しいが、ゲイは自分だけだ。それが理由なのか、無意識にプライベートを口にしないようになった。

ある日、いつものように出会い系アプリをチェックすると、足跡に見慣れた人がいた。うちの会社の取締役である。「プロフ見られちゃった」と一瞬焦ったが、向こうもオープンリーゲイで、長年付き合っているパートナーがいて、プロフを確認するとオープン・リレーションシップと書いてある。とりあえず何も見なかったことにして、会議でばったり会っても普段通りに挨拶するだけだ。

「もしかしたら、キャシーってオープンなの?」

後日、よくランチに行く同じ会社のゲイ友達にいきなりそんな質問をされた。噂が流れたのか、あたしが口を滑らせたのかはわからないが、正直に説明した。ゲイコミュニティではオープン・リレーションシップもそこまで珍しくはないので、彼も別に驚くことはなかった。なんだか、いつかのカミングアウトのような感覚である。これで、職場で週末に何があったのかを話せる人が一人増えた。

ここ最近はプライベートなことをフィルターする必要がなくなった。パンデミックで去年からずっとリモートワークだし、オープン・リレーションシップも事実上休止で、とてもモノガミーな生活をしているからである。それで客観的になれたからか、この経験をブログに書くことにした。今の社会ではオープン・リレーションシップは少数派である。いくら年数を重ねても、いくら慣れたとしても、こうした不便な部分はなくならない。

職場のクローゼットと、オープン・リレーションシップ” への2件のフィードバック

  1. こちらも海外在住のゲイです。職場の性質上クローゼットにしてたのに職場恋愛の兆しがあって悩んでします。いかも僕はシングルじゃなくて。今の彼とはオープンですがこの話を職場でするのはちょっと難しくて。カウンセリングも昨年末からもう三人ぐらいの人に会ってます。どうしようかな。。。。

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