「違いがあってもみんな同じ」という考え方で人種差別は無くなるのか

今週より休暇が始まったので、家でまったりYouTubeを漁っていると、MステでのAIによる「Not So Different Remix feat. Awich」のパフォーマンスを見つけた。しかも、平和をテーマにしたメッセージ性の強い楽曲らしい。あたしが知る限り、J-POPでは政治的な曲が珍しいので、どんな内容なのか気になって聞いてみた。ちなみに、学生時代はAIの「E.O.」とか「365 feat. DELI」が好きだったのよ。J-POPに上手くR&Bを取り入れてて面白いなと思った矢先、まさかの「Story」が大ヒットしてしまって、その後バラードばかり歌っていた印象がある(違ってたらごめんなさい)。これが15年前だというのが恐ろしい。新曲「Not So Different」では初期のAIに近い曲調で、歌詞は半分英語である。

久々のAIはやっぱりカッコいいと思いつつ、歌詞を読んでみる。「we are not so different, all the same inside(私たちはそんなに違わない。中身は同じ。)」や「speak a different language, come from different places, but we can come together(違う言語を話して、違う場所から来たって、私たちは共生できる。)」という歌詞を見ると、違いを受け入れて多文化共生しよう的な歌だ。「海の向こうでは兄弟がまだ getting shot on the blocks(銃撃されている)」というAwichのラップ部分も読むと、Black Lives Matterのムーブメントについて歌っているとも考えられる。AIはインタビューで「生きづらい世の中ではありますけど、そういうときこそもっと私たちが“人と人”として向き合っていくことが大事」と語っている。

みんな違うけど、実は同じ人間。だから、仲良くすればきっと共存できる。この類のメッセージは良く言えば普遍的、悪く言えばありがちである。有名な曲では、ジョン・レノンの「IMAGINE」とかがある。私もトロントに留学する前は、パンフレットで読んだ多文化共生都市という言葉に心が躍った。「ゲイもストレートも同じクラブで踊れて素敵だな」とかそんなことばかり想像していた。違いを受け入れて共生できるって聞こえがいいのよ。決して間違っているメッセージではないんだけど、あまりにもシンプル過ぎて、現実離れしていて、それしか聞こえないと物事の本質が見えなくなってしまう。

今年は、Black Lives Matterや人種差別に対する見方がシフトした年である。ミネソタ州のミネアポリスでジョージ・フロイドが警察官に窒息死させられて、そこから世界的に拡散した抗議活動は警察による黒人に対する暴力とその他の人種差別の撲滅を訴えた。今まで、Black Lives Matterの運動はメディアで批判されることも多かったが、今年は運動への支持を表明する人が一気に増えた。2016年にBlack Lives Matterのアクティビストたちにプライドパレードを止められて文句ばかり言っていた友達も、今年はノリノリでBlack Lives Matterのハッシュタグを使っている。一方で、人種差別に取り組むアクティビストたちはこの流れに警戒的でもある。リップサービスやパフォーマンスに惑わされては、根本的な問題解決には至らない。「肌の色の違いを乗り越えればみんな人間」と言われても、差別で命を落とす人がいなくなるわけではない。

自分の過去の経験を振り返ると、「みんな違うけど、同じ人間として仲良くすればいい」という考え方は、反差別運動の妨げになることも多々ある。例えば、「違いを無視すればいい」と勘違いして、差別を受けている人の立場や経験を尊重せずに口出しする人は珍しくない。もっと面倒くさいのが、これで話を終わらせようとする人である。彼らは「違い」こそが差別の問題だと信じていて、社会に存在する格差や力関係には関心がなかったりする。そういう人たちは表面的に反差別運動を支持していても、実際に社会の構造を変えようとした途端に反対してくることがある。こうして平和を求めつつ、現状維持を好む人は多い。だから、差別されている人たちが抗議すれば「どうして仲良くできないんだ」と言われ、権利を主張すれば「人種にそこまで拘る必要性はない」とか「黒人が権利を獲得したら白人に不公平」という理由を並べられて、「違いを乗り越えて共生しよう」という話に強制的に持っていくのである。こうなると、社会が変わらず、差別で命を落とす人もいなくならない。

今年のBlack Lives Matterの運動拡散に伴って、多くのアーティストが人種差別や黒人が警察に殺されている現状について歌っている。グラミーにもノミネートされているH.E.R.の「I can’t Breathe」は、その中でも特に心に残った曲である。彼女は率直な歌詞で「we breathe the same and we bleed the same but still, we don’t see the same(同じように息し、血を流したところで、私たちが見ている世界は同じではない)」と歌っている(全曲の歌詞和訳はこちら)。この現状から前に進むには、もっと多くの人たちが「違いがあってもみんな同じ人間」という考え方から抜け出す必要があるのかもしれない。

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