『魔女の宅急便』と、スランプからの脱出

今年よりカナダのNetflixにジブリの名作たちが追加されたので、子供の頃から好きだった『魔女の宅急便』を見てノスタルジックになっていた。しかし、今の視点からだと全然別の作品に見えてくる。13歳になって新しい街で魔女として独り立ちするキキの姿が、自分の歩んできた道と重なって見えて、ちょっとしたことで目がうるうるしてしまう。今回の視聴ではおソノさんの優しさにやられた。

子供の頃、自分がゲイかもしれないという気付いて、誰にも打ち明けられなかった。そんな時期、何よりも将来の事が不安だった。ゲイとしてどんな進路があって、仕事があるのか全く想像できなかった。周りにロールモデルがいなかった上に、情報も非常に限られていたので、お先真っ暗だと頑なに信じていた。ある意味、両親にゲイだとバレる以上に、ゲイだという理由で自立できないことが両親に申し訳なかった。こんなコンプレックスを長い間感じていたせいか、数年前にキャリアで躓いた時に予想以上に落ち込んだ。『魔女の宅急便』で、キキは飛ぶという唯一の取り柄を失いかけてどうすればいいのかわからなくなってしまう。コミュニティの中で働くことが唯一の取り柄だと思っていた自分も、それを取り上げられたことで前に進めなくなってしまった。

当時、自分に何ができるのか、よく理解していなかった。有名な「やりたいこと」、「できること」、「求められていること」の表を使って考えたところで、「やっぱり両親のアドバイスを聞いて理系にしておくべきだった」などと今更な後悔をしてしまう。今まで培ってきた経験をどう次に活かせるか自信もなかった。そんな中で、友達の紹介で凄い人とお茶をすることになった。彼女は20代前半でリーダーシップに出世し、自分で企業も立ち上げ、様々な雑誌に取材されるほどだった。忙しいのに、わざわざ話を聞いてくれるということで、自分がスランプに陥っていると素直に白状した。会う前は年下にこんな相談するの恥ずかしいとか考えていたが、話が始まると意気投合して、彼女はたくさんアドバイスをくれた。その中でも、一番役立ったのはこれだ。

「自分で自分を過小評価して、安売りしちゃダメ!」

その後、社員数千人規模の組織でダイバーシティ関連の仕事をするようになって、彼女が言葉の意味がやっとわかった。社員約10人の小さなNPO団体で働いていた経験のおかげで、自分は知らないうちになんでも屋になっていた。プランニングや企画書も作成できるし、プレゼンもマーケティングもできる。得意ではないが、予算やテクノロジーもなんとかなる。何より、少ないリソースを駆使してプロジェクトをまとめ上げるのが何より得意になっていた。自分にとって当たり前だったことが、周りから評価されるまで全く見えていなかった。こういったスキルはソフトスキルと言われることもあって、様々な仕事や場面で応用できる。『魔女の宅急便』の例で言えば、キキは飛べるという取り柄以上に、宅配のビジネスを思いついてすぐに実行したことや、一生懸命人の役に立とうとする姿勢が評価されて、新しい街でうまく独り立ちできたとも言える。

昨年、別の部署で面白そうな求人があって、応募するか迷っていた。コミュニティ開発やソーシャルイノベーションに関われる一方で、自分の実力不足ばかり気にして履歴書を出せずにいた。同僚に背中を押されて、締め切り直前に応募し、面接をすることになった。「自分を過小評価しない」と心に刻んで、自分が今まで成し遂げた成果を全てぶつけた。正直な話、絶対に落ちたと思っていたが、数日後に電話でオファーをもらって驚いた。しかし、仕事初日、あまりに複雑な仕事内容に「こんなの絶対無理」と心の中で叫んでいた。自信が無いのはなかなか直らないのだ。そこから二年近く経った今、自分のチームを率いて、様々な面白いプロジェクトに手を出せるまでに成長できた。分野は違っても、仕事を通してダイバーシティやコミュニティにも貢献できている。自分のキャリアからこんな場所に辿り着くなんて、想像もしていなかった。

ここ数年、ずっと感じていたスランプからも少しずつ回復している。そして、もっと広い視野で自分の「やりたいこと」、「できること」、「求められていること」を考えられるようになった。次また躓いて転んだとしても、きっともっと上手に立ち上がれるようになっている。たぶん。

ちなみに、英語吹き替えバージョンの『魔女の宅急便』、キルスティン・ダンストがキキ役だということで見てみたら、ユーミンの名曲「ルージュの伝言」と「やさしさに包まれたなら」が微妙な英語ポップソングに差し替えられてて、なんだか雰囲気台無しだったわ。

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