安くて美味しいエスニック料理の価値

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.125 安くて美味しいエスニック料理の価値

この数年、トロントに高価な料理を出すエスニック・レストランがたくさん増えた。斬新なフィリピン料理が有名なバーは定番のデートスポットだし、美味しい居酒屋もたくさん登場して、今年はアジアン・デザートが大ブームである。本来、安くて美味しいというイメージだったエスニック料理はやっとトレンディなイメージを勝ち取れるようになった。

いつか、友人とチャイナタウンの馴染みのレストランで食事をしていると、彼はメニューの値段が少し高くなっていたことに不満を示していた。そして、中華料理だからという理由でチップは10%だけに留めた。その前の週に期待外れだったフランス料理で文句も言わずに三桁の会計を気持ち良く払って、チップを20%も弾んだ彼はどこへ行ってしまったのだろう。トロントで文化の違いによって料理の価値が決まることがずっと不思議だった。ベトナム料理やインド料理だから安くて当たり前。イタリアンやフレンチだから高くて当たり前。本当にそれで筋が通っているのだろうか。数年前、知り合いがやっていたタイレストランに毎週通っていた。誰にも知られていない穴場で、手間暇と気持ちがこもった美味しい料理を出してくれるからいつ来ても大満足だった。お腹いっぱい食べても、消費税とチップを含めて$20以上を払うことはなかった。もしこれがフランス料理だったら、数倍以上払っていただろう。料理の文化が違うことで、それを作る人間の労力と時間に対して支払われる対価にここまで格差ができる。トロントで高級なエスニック料理を出しても、それにお金を払ってくれるマーケットがないからビジネスとして成り立たないと言う人も多くいた。そのタイレストランは口コミで大ブームとなり、メニューの値段はあっという間に上がって、今ではトロントの繁華街で次々に新店舗を増やす人気店となった。それが火付け役となったのかはわからないが、同じ時期に高価なエスニック料理店も一気に登場した。高価といっても、安いフランス料理と同じくらいの値段だから皮肉である。話は変わるが、カナダ建国前から中国系カナダ人はこの大陸に移住しているのに、いったい中華料理はいつまでエスニック料理として扱われるんだろう。

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