キャシーの日々ハッテンは、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。
キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.106 男同士でホテルに泊まりたい
彼氏と一緒に日本に帰国して観光でもしようかと思っていたら、思わぬ壁にぶち当たった。ステキな温泉旅館やホテルを見つけてさっそく予約しようと思ったところで、マウスを握る手が止まった。男性二人でダブルの部屋に宿泊できるのだろうか。多くのホテルは男性二人客での利用を拒否すると聞いたことがある。一概にゲイ差別が理由ではないらしいが、ゲイとしてその施設が使えないというのは不便極まりない。大阪市では男性カップルがダブルの部屋に宿泊するのを拒否する行為が旅館業法違反にあたるとして、市内のホテルに指導をしたこともあったらしい。しかし、トロントから日本のホテルや旅館を調べても、そこがゲイフレンドリーなのかはわからない。女友達同士の宿泊は一般的で、そうした層をターゲットしたツアーも多いが、男性同士の表記はどこにもない。もしも運良く男性二人でダブルの部屋にベッド一つで泊まれる場所が見つかったとして、そこでどんな目で見られるのかは実際に行ってみるまでわからない。4年ぶりの帰国にワクワクしていたが、一気にテンションが下がってしまった。そこまでこだわらずに、友達同士のふりをして別室かシングルベッドが二つある部屋に泊まるのもオプションといえばそうだが、どうもすっきりしない。日本には毎年海外からたくさんの観光客が訪れているのに、ゲイカップルに対してはどうした対応をしているのか気になってしまった。2020年に控える東京オリンピックには数多くのゲイカップルが日本を訪れるだろうに、彼らはみんな友達のふりをして別室に泊まることになるのだろうか。
「カナダでは当たり前なのに!」という態度で文句ばかり言いたくはないものの、こんなことばかりでは頭痛がしてくる。一方で、同性同士の結婚式をあげることができる式場が日本でどんどん増えているというニュースを耳にした。結婚の予定はないが、こうした変化には心が温まる。カップルとして同じベッドの上で寝たいという些細なことがここまで複雑になってしまうなんて、改めて自分がゲイだと痛感した。私たちの日本旅行はどうなってしまうのだろう。楽しみでもあるし、怖くもある。