地獄まっしぐらなゲイ

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.98 地獄まっしぐらなゲイ

仕事帰り、ストリートカーに揺られてスマホのスクリーンと睨み合いっこしていると、とても存在感のある人が乗ってきて思わず横目で確認した。その人はどでかいプラカードを首からぶら下げていて、明らかに浮いていた。そのプラカードに何が書いてあるのかと思えば、「ゲイは地獄に堕ちる」である。ストリートカーの乗客たちもそれに気付いたのか、さっきから気まずい雰囲気が漂っている。正直、気分が悪くなった。しかし、ここで何か言ったところで、終わりのない口論になってしまって疲れるだけだ。何も見なかったと自分に言い聞かせて、スマホのスクリーンに戻る。残念なことに、こういうことは珍しく無い。春から初夏にかけて、プライドのシーズンが近づくにつれて、それを見かける機会も増える。「レインボーだ!多様性だ!人間みんな素晴らしい!」とプライドでポジティブな気持ちになった次の瞬間、「ソドミーだ!それは罪だ!ゲイはみんな地獄に堕ちる!」と今度は気分を害される。

先日、ゲイタウン周辺で「このまま先に進むと地獄まっしぐら!」とチャーチストリートの方向を指したプラカードを掲げた集団を見かけて、思わず声をかけてしまった。「どこに進むと地獄まっしぐらなの?」彼らは目を輝かせて「信じれば救われる!」というマシンガントークを放った。何を言ったところで、返って来る言葉は変わらなかった。まるで対話にならない。そのまま無視して通り過ぎるべきだった。自分の存在を必死に全否定する集団を見かけるのは珍しいことじゃない。きっと慣れた方が楽だ。そう自分に言い聞かせるも、心の中では納得できない。世界で一番読まれた本を心の底から信じる彼らに、私の言葉は届かない。同じように、彼らの言葉も私に届かない。しかし、それをトロントらしさとして受け入れるのにも、そろそろ疲れてきた。

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