キャシーの日々ハッテンは、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。
キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.97 プライドっていったい何?
「プライドって何?」と聞かれても、いまいちうまく説明できない。プライドの最中、目に入るのは大手企業が掲げるレインボーの広告やセクシーなもっこりをぶら下げて歩くマッチョなお兄さんばかり。ゲイである自分から見ても、たまにプライドが何なのか混乱してしまうことがある。
プライドのお祭り騒ぎも静まった夜にカメラ片手に歩き回っていると、とてもステキな方と出会った。その人は金色のハイヒールを履いて、水色のスカートをなびかせながら歩いていた。長いブロンドの髪の毛は無造作に束ねてあって、メイクもアクセサリーもない。ドラァグクイーンなのか、男性なのか、女性なのか、ただドレスを着て楽しんでいるのか、周りから見ているだけではわからない。ただ確かなことは、その人がとても自然体だってことだ。その笑顔を見ているだけで、こっちまで笑顔になった。その瞬間、プライドの意味を再確認できた気がした。小さい頃から「周りみたいにフツーにしなさい」と言われ続けた。男らしくないといけないし、ゲイっぽい仕草は笑われちゃう。少し違っただけで後ろ指をさされた。そんなプレッシャーに負けて、自分らしい部分はできるだけ殺すようになった。周りと同じようなクローンになれば、バカにされることは減った。しかし、自分を表現することもできなくなって、退屈な世界に生きるようになった。プライドとは、そんな息苦しい場所から自分を引っ張り出してくれる存在である。ほんの少しの間だけかもしれないが、好きなように自分を表現して、好きなように生きることの素晴らしさを体験できる。それだけで、生きる力がみなぎって笑顔が溢れてくる。派手な広告やセクシーイメージに隠れてはいるが、プライドの根本的な部分は未だに変わっていないはずだ。そして、これからも変わらないでいてほしい。