カナダで生まれ育った「バナナ」たち

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.89 カナダで生まれ育った「バナナ」たち

ネットで知り合ったアジア系カナダ人と初デートに出かけた友人は、チャイニーズアクセント丸出しなのに「生まれも育ちもカナダ!」と言い張るその人に呆れていた。あまりに見え透いていたので、その友人は巧みな話術でそれが嘘だととすぐに突き止めた。カナダで生まれ育ったと嘘をつく人に出会ったのはこれが初めてではないという。別にアクセントがあるからって、その人がカナダで生まれ育っていないということにはならない。もしかしたら、家族や友人の間で他の言語を話す機会が多かったのかもしれないし、留学や何かで長期間海外に滞在していたというケースもある。ただ、ここで肝心なのはアクセントではない。いったい何が理由で、人は事実を偽ってカナダで生まれ育ったと嘘をつくのだろうか?

「バナナ」という有名なスラングがある。アジア人なのに、立ち振る舞いや考え方がまるで白人と変わらない人のことを差す言葉だ。外見は黄色でも、中身は真っ白なバナナにそっくりというわけである。アジア人のくせに白人になりたがっているとか、いくら白人になりたくてもアジア人はアジア人だとか、いろんなニュアンスが込められている。このスラングがどう使われているのかを少し掘り下げるだけで、トロントで生きるアジア人が日々感じる圧力がだいぶ見えてくる。それを知ると、初デートで嘘をついたその人の気持ちも少しわかる気がする。そうでもしないとデートにありつけるのさえ難しかったのかもしれないし、ずっと長い間劣等感を感じていたのかもしれない。「アクセントがあったって、生まれや育ちがカナダじゃないからって、別に何も問題はないのよ。何が頭に来るかって、自分のアイデンティティを恥じていることよ!」と、嘘をつかれた友人は熱弁をふるった。彼らにセカンドデートは訪れなかった。

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