ヤリマンはそんなにいけないものなのか?

セックス・アンド・ザ・キャシーは​、LGBTのためのコミュニティサイト『2CHOPO』(にちょぽ)に2014年から2017年まで連載されていたコラムです。

セックス・アンド・ザ・キャシー(コラム連載アーカイブ)
第7回、ヤリマンはそんなにいけないものなのか?

秋が足早に通り過ぎて、すっかり肌寒くなった頃、キャシーの友人はヤリマンだという理由で友達を一人無くした。

「ヤリマンとは友達になれない」と真顔で友達に言われたようで、彼は落ち込んでいた。「ヤリマンだなんてひどいこと言われて散々だったね」と慰めると、彼は首を横に振った。

「別にヤリマンはヤリマンだからそこはいいの!でも友達やめるっておかしくない?」

自他共に認めるヤリマンの彼は、豪快でオープンで賢い…ヤリマンだ。アドベンチャーで興味があればどんな変態プレイにも手を出す。もちろん、手を出すからにはしっかり事前に知識とスキルを身につけるほど勉強熱心。その上、自分と相手の健康を最優先に考えていて、性感染症予防には手を抜かない。そんな自分を恥じることもなくすべてをさらけ出してまっすぐにセックスや恋愛に猪突猛進する。したくない人にセックスを強要したりしないし、相手の許可なしには何もしない。浮気には人一倍厳しくて、自分の恋人じゃない人とデートしたりセックスする場合はちゃんと相手から了解を得ている。

キャシーから見ればヤリマンプライドに溢れた彼は尊敬に値するステキな人間だ。ただ、そうとは思わない人も多いようである。子供の頃から、セックスに興味を持つことはいけないことだという同調圧力をひしひし感じてきた。セックス好きだと烙印が押された日には、みんなからエッチだとかスケベだとか呼ばれてしまう。オトナになれば、セックスは社会規範の中で適度にしておくものになる。それ以上したり、それ以外のことをやってしまうと変態とか尻軽だと呼ばれてしまう。セックスをしないとこれまたバカにされるので、常に綱渡り状態である。本当のところ、どこが境界線なのかなんて誰もわからないから、ビクビク手探りで丁度いいとされる場所に隠れさえすれば辛うじて後指を指されずに済む。

そんな肩身の狭い思いなんてしたくないから、なんと言われようとヤリマンの彼は誇らしく生きている。むしろ、ヤリマンは彼にとって褒め言葉であって、大事なアイデンティティでもある。言うまでもないが、ヤリマンとは不特定多数の男性と肉体関係を持つ女性を指すスラングで、一般的にネガティブな中傷言葉として使われている。世間ではヤリマンはふしだらであばずれでだらしないのだ。そして、なぜかゲイコミュニティでもヤリマンが不特定多数の男性と肉体関係を持つゲイ男性を指すスラングとして使われている。ちなみに、なぜヤリチンではないのかは定かではない。

「君と一緒にいると、こっちまでヤリマンだと思われて大迷惑なんだよ!」

ヤリマンに耐えられなかったその友達はこう言い残して絶交をしたらしいが、ヤリマンでいることは本当にそこまで言われるほど悪いものなのだろうか。ヤリマンといえば純粋にセックスが好きで、自由でリベラルなライフスタイルを楽しむ人だと思っているので、極めてヘルシーな印象だ。例えば、過激なSMプレイが大好きな友人が数人いるが、彼らは尋常ではないくらい責任を持ってセックスに励んでいる。リスクの多いプレイだからこそ、真剣に取り組まないと誰かが怪我をしてしまう。側から見ればそんなところはわからないから誤解されがちだが、プレイが過激なら過激なほど、彼らは慎重にコミュニケーションを重ねてお互いを配慮しながらエンジョイしている。ある意味セックス職人だ。

ここまでヤリマンを褒めてしまうと、そういう人がいるからふしだらな習慣が広まるという批判をもらうことがある。ただ、少し冷静になって考えて欲しい。セックスや恋愛は時代や文化によって捉え方がビックリするくらい違う。そう遠くない過去では、結婚する前にセックスをすること自体ありえないと思われていた。今の時代、逆に白い目で見られるのは結婚するまでセックスをしないと誓う人だ。別にどっちが正しいとか間違っているとかそういう問題ではない。むしろ、セックスや恋愛に限らず、善悪という狭いレンズ越しに物事を見るから大切な部分を見落としてしまう。重要なのは何が良いとか何をするべきかではなくて、自分にとって何が大事で何をしたいかである。他人の目を気にして生きては、自分がかき消されてしまう。他の人がどんな選択をしようと、周りになんて言われようと、結局自分の人生を歩むのは自分自身だ。

「ヤリマンと友達になりたくないなら、それは彼の勝手だよ。こんなにステキな人間をそういう視点でしか見られないなら、もったいないことをしたのは彼の方だよ。君は何も気にすることないし、これからもありのままの自分(ヤリマン)を貫き通せばいいよ。」

そう慰めてあげると、ヤリマンの彼はまた笑顔になった。

「ありがとう。そうそう。今夜は最近知り合ったカップルと3Pやって、その後は緊縛羞恥プレイを楽しむんだ。」

いつもの調子に戻った彼はとても嬉しそうだった。それにしても、どうしたらそんなにアクションに恵まれるのだろうか。いつか秘訣を教えて欲しいものだ。

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