ブルーとピンクの世界

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.68 ブルーとピンクの世界

友人が元気な女の子を産んで、子育てに大忙しなので、何かプレゼントでも買ってあげようとおもちゃ屋さんに足を踏み入れた。思い出の中にあるおもちゃ屋さんといえば、所狭しに並んだカラフルなおもちゃがどれも輝いて見えて、そこにあるものをいつか全部揃えようと野望ばかりが膨らんでいた。オトナになってから入るおもちゃ屋さんは相変わらず楽しくて、聞いたこともないおもちゃにときめきながらも、うまく説明できない違和感を感じていた。お店の中を見回すと、多くのおもちゃが二つの色でキレイに分けられている。ブルーのおもちゃは男の子向けで、スーパーヒーローやラジコン、プラモデルが並んでいる。一方、女の子向けのピンクのおもちゃはバービー人形やおままごとセットだったりと、家庭的なものや美容に関するものが多い。男ならこういうおもちゃで遊んで、女の子ならそういうおもちゃで遊べと、そんな不自然なプレッシャーをひしひしと感じる。

子供の頃、目の前にあるものはなんでもおもちゃになった。公園に落ちている枯れ葉と石ころで何時間もごっこ遊びで盛り上がったし、両手と木の枝があれば砂場はアートが溢れるキャンバスになった。男とか女とか、そんなことなんて意識する暇もなく、日が落ちるまで必死に遊んだ。ブルーやピンクなんて限られた色ではなくて、もっとカラフルな世界で生きていた。こんな風に色分けされたおもちゃ屋さんに違和感を感じるのも、そのせいなのかもしれない。

ブルーとピンクのおもちゃ棚を通り抜けると、ベイビーブルーとベイビーピンクで分けられている幼児の玩具売り場があった。少し寒気を感じながら、そのおもちゃ棚の端っこに落ちていた黄色のペンギンが可愛いブランケットを買って、そそくさとそのおもちゃ屋さんを後にした。

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