キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第23回、どこに行けば彼氏に出会えるの?
東京でもトロントでも、一番頻繁にゲイ友達の口から飛び出る質問は「どこに行けば彼氏に出会えるの?」である。そんなありふれた質問にも関わらず、納得の行く答えはなかなかない。インターネットの普及や技術の進歩によって、ゲイが出会える場所は数十年前に比べれば遥かに増えた。数えきれない出会い系サイトやスマホアプリの登場によって、ある意味出会いが多すぎる時代となった。それなのにどうして出会いに餓えている人がこんなに多いのだろう。
こうしたゲイ男性たちが出会うためのツールが出揃ったところで、ゲイたちは「幸せ」になったのかといえばそうとは限らない。トロントのゲイクラブではスマホの画面とじっと睨めっこしている人があちこちにいる。目の前に話しかけたい人がいれば、直接話しかけるよりもスマホのアプリからメッセージを送った方がずっと簡単だ。悲しいことに、目と目が合ってからのぎこちない会話で始まる古き良き出会いは絶滅しかけている。グラインダーのようなアプリのおかげで出会いやセックスは増えたのかもしれないが、人間同士の繋がりは減ったと考える人もいる。人間は選択肢が増えれば増えるほど貪欲になっていく。指先を動かすだけで男カタログが手に入れば、他の男性と出会う行為がゲームのような感覚になる。画面に映る男性たちはもう人間ではなく、写真と文字の羅列でしかない。「アプリを開けばもっと良い人がいるかもしない」と自分に言い聞かせて同じ行為を繰り返し、出会い系アプリに依存して、我に返っては惨めな自分に気付く。こんなのは極端な例だが、ゲイの間では決して珍しいことではない。
こんな時代だからこそ、出会いを求める前にまずは自分と他人のことを人間扱いすることから始めるべきなのかもしれない。極当たり前のことだが、それを忘れている人があまりにも多い。「どこに行けば彼氏に出会えるの?」という質問の答えは自分で見つけるしかない。