キャシーの日々ハッテンは、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。
キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.58 多文化共生の街の市長は差別主義者?
トロントの市長であるロブ・フォード氏がコカインを吸ったと堂々と認めた。半年前にフォード氏がコカインを吸っている姿が映ったビデオの存在が判明してから、メディアで彼のスキャンダルを見ない日はなかった。彼の存在は世界中に知れ渡り、お笑い番組はこぞって彼を取り上げ、トロントは一躍「コカイン市長の街」として有名になった。
この騒動の陰に隠れてあまり注目はされていないが、問題のコカインビデオの中でフォード氏はホモフォビックで人種差別的な発言をしていたと警察が公表している。以前から公の場で「犬のように働くアジア人にトロントが支配されている」や「薬物中毒者やゲイでなければエイズにならない」と差別発言を繰り返す彼のことなので、別に今更驚くことはないが、こんな人物が多文化共生の街であるトロントの市長だとはまるで皮肉の利いたジョークだ。コカイン摂取が発覚した後も、フォード氏はこのまま市長として居座り、来年の市長選でトロント市民に決断を委ねるとしている。果たしてトロントは再びフォード氏を選ぶのだろうか?
フォード支持者の多くは彼の節税政策をサポートしているが、こんな大きなスキャンダルを巻き起こした彼は、メディアへの対応や彼自身の保身で市長としての大切な時間を無駄にしている。決して安くはない市長の給料ももちろん私たちの税金から来ている。何より、フォード氏が再選すれば、トロント市民が彼の度重なる差別発言を再び許すこととなる。そんな市長が率いる街は決して多文化共生ではない。様々な人たちが暮らすトロントには、視野が広く、人権問題にセンシティブで、市の仕事に真剣に取り組んでくれるもっと相応しい市長がいるような気がする。それとも、トロントはこのままフォード氏と共にお笑いの道を進むのか。