キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第18回、同性婚の婚姻届より重みがあるもの
そろそろ交際5年目になる友達のゲイカップルは既にマンションを購入していて、来年には一緒にオンタリオ湖を一望できる新築への引越しが決まっている。自分と同い年なのに、随分と遠いところまで行っているなと感心しつつ、そういえばトロントではこんなゲイカップルが珍しくないと気付いた。
家賃の高いトロントでは、お互いが経済的に自立している場合、別々にアパートを借りるよりも同棲した方が遥かに安上がり。だからか、付き合って半年ほどで同棲するゲイカップルも珍しくない。ここだけの話、自分も経済的な理由で当時付き合って半年も経ってなかった彼氏に同棲を持ちかけた。1年契約の借家が一般的なトロントでは、一度同棲してしまうと別れるのに手間がかかる。途中で契約を破ればペナルティもあるし、片方に出て行かれては一人で高い家賃を負担することになる。「これで1年は別れられないね」と昨年、笑顔で彼氏と契約書にサインをしたのはよく覚えている。カップルの中には破局し、それでもアパートの契約が終了するまで同棲を続けるケースも多い。そのまま同棲1年目を乗り越えたカップルは晴れてコモンロー(事実婚)となり、財産分与縛りまでもが発動する。貯金のあるゲイカップルなんかは借家よりも将来性のあるマンション購入に目を向ける。家賃で払っている額を新築マンションのローン返済に当てれば、地価高騰中のトロントで一儲けも夢じゃない。カップル名義で数千万円単位の買い物をするのは、実は婚姻届よりも遥かに重みがあるような気がする。
トロントで長続きしているゲイカップルをよく見かけるのは、実は同性婚だけのおかげではなくて、こうした経済的なコミットメントが理由なのかもしれない。なんたって、30年のローンは平均的な結婚より長いもの。