キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第14回、犬と歩けば(肉)棒に当たる
同じくゲイタウンに住む友達の犬を週末の間世話することになり、あたしの中に密かな野望が芽生えた。トロントのゲイの間では犬はチンコマグネットと呼ばれている。愛犬家が多いこの街では、犬を飼っているゲイも多い。週末にゲイタウンを歩けば、犬連れのイケメンを至る所で見かける。お互いのリードが絡まって目と目を見つめ合い、イケメンの犬と戯れながらもさらりと飼い主の電話番号を聞いたりなんて、そんなロマンチックな出会いもあるとかないとか。というわけで、チンコマグネット(友達の犬)を連れてさっそくゲイタウンを数周したわけだが、一向に声がかからない。いくらスタイリッシュにうんちを拾っても、いくら優雅に犬がおしっこし終わるのを待っても、ステキな展開になる気配なし。「君、可愛いね!」「そんなに急いでどこいくの?」とすれ違うイケメンに話しかけられるのは犬ばかり。まさかチンコマグネットの話は都市伝説だったのか。そんな話を友達にすると「飼い主のルックスも重要だと思うのよ」とぼそりと毒舌を吐かれる。もちろん、そんな言葉は耳に届かない。
日も暮れていい加減にあきらめようとした時、ハッテンの女神が微笑んでくれた。犬が夜にお漏らししないように、夜遅くにうちのマンションのドッグパークに散歩に出かけたときのこと。真っ暗な公園には犬連れのゲイが数人。犬を散歩させつつ、飼い主はお互いを意識しながら、たまに小話も聞こえて来る。この雰囲気、まさにハッテン場。どうやら幻のハッテン穴場はうちのマンションの裏にあったようだ。残念ながら本当にハッテンしていた人はいなかったけど、他の飼い主たちとも打ち解けたし、何より未知なゲイカルチャーに巡り会えたことにドキドキ。犬さえもハッテンのツールにしてしまうなんて、ゲイは侮れない。