自分に素直になったとき

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.23 自分に素直になったとき

子供の頃、宿題をさぼる度に母から「お母さんを騙せたって、自分自身は騙せないからね」と意味深な説教をよくされた。お尻ぺんぺんもよく覚えてるけど、この一言も不思議と心にくっきり残っている。

大学時代になって自分の進路を決める際に、もう自分自身からは逃げられなくなった。当時は自分自身の事も、進んでいる道もだいぶ見失っていた。小さい頃から繰り返しつき続けた嘘が、大きな壁となって自分の前に立ち塞がった。結局、母の言う通り、いくら他人は騙せても、自分の事は最後まで騙せなかった。 そのとき、また母の言葉が頭の中で響き渡った。母の言う事なんてちっとも聞くような子ではなかったのに、このときはもう従うしか無かった。そうして、自分にまとわりついた嘘をひとつずつ剥がして、もう一度初心に戻って歩き出した。

先日、「キャシーって、なんかいつも幸せそうだよね」とある人に言われた。自分が今幸せなのかどうかはわからないが、5年前より遥かに前に進めている事は確かだ。自分自身に素直になる事で、ここまで目の前の世界が変わるなんて、夢にも思ってなかった。そういう意味では、後悔のない道を歩いていることになる。昔より遥かに自分を信じられるようになったし、自分のことも、他の人のことも好きになれるようになった。これはまがいも無いポジティブな変化だ。

いつか母に自分がゲイだということを説明したときに、母の説教が大きな一押しになったということを教えてあげた。困り顔の母は、まるで「別にそこまで素直になれと言ったつもりはなかったんだけど」とでも言わんばかりだったが、もはやそんなことはもう関係はなかった。

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