二文字では表現できない自分らしさ

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.18 二文字では表現できない自分らしさ

いつしか、「I’m gay」と自己紹介するのをやめた。別にストレートに目覚めたとか、そんな話ではない。“ゲイ”という二文字に自分自身を収容するほどのスペースが始めからなかったからだ。

思春期に“ゲイ”という二文字に出会ってから、必死にそれを追いかけた。たくさん振り回されて、それが架空のものだと気付くのに時間はかからなかった。ずっと“自分=ゲイ”と考えていたけど、次第に自分はただ男に生まれて、男が好きなだけだってことがわかった。同じことだと思われるかもしれないけど、全然違うのだ。

社会は面倒なことは嫌う傾向にあって、簡単に物事を引っ括めて、狭い部屋に押し込む。「女性」「男性」「日本人」「カナダ人」なんて典型的で、それぞれの部屋に勝手に飾られたイメージで、人はその中に押し込まれた人を判断する。「女のくせに」、「日本人って」から始まる文は決まって個人を無視した勝手なイメージの上で成り立っていることが多い。

ゲイの世界に足を踏み入れた瞬間から、「ゲイは派手に着こなして、ジムに行って、クラブで踊って、いろんな男と交わり合う」なんてステレオタイプを目の当たりにして、これが自分の求めてたものなのかと疑った。その二文字で呼ばれる度に、“ゲイ”のイメージとは違う自分がかき消されて行くような、そんなもどかしさを感じた。どうあがいても、ゲイじゃない自分をその狭い部屋に押し込むのは出来なかった。

いつか、自分らしさとは満開の花のようだとある方が教えてくれた。彼女云く、“レズビアン”であること、“女性”であること、“HIV陽性”であること、“母”であることがそれぞれ花びらのように彼女を象るそうだ。

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