キャシーの日々ハッテンは、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。
キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.119 プライドの楽しみ方
トロントプライドは今年から6月をプライド月間として、様々な関連イベントを開催することを発表した。1981年の警察による不公平なハッテン場摘発に反発したデモ行進は、35年の時を経てトロントを象徴するビッグイベントとなった。プライドなんて裸のお兄さん目当てのパレードだと思っているならもったいない。裸のお兄さんは目の肥やしになるが、それはプライドのほんの一部に過ぎない。プライドを本当に楽しみたいならもっとズッポリ奥まで足を踏み入れてみよう。
芸術の街であるトロントだけに、プライドの最中は数多くのアーティストと作品が集まる。展示会から、演劇、ダンス、映像作品、そして現代アートまで、プライド関連のアートイベントは数え切れない。ドラァグクイーンにとってもプライドは忙しい時期で、彼女たちは一番気合の入った衣装を着こなしてド派手な口パクパフォーマンスを披露してくれる。チャーチストリート周辺は朝からチャリティーマラソンやストリートフェアで盛り上がって、大学の新歓のようなスポーツサークルの勧誘やコミュニティサービスのブースを見て回るのも楽しい。子供連れでプライドに訪れるなら、子供と一緒に楽しめるチャーチストリート・パブリックスク−ルのファミリーイベントに参加するのもいい。社会問題に関心がある人なら、LGBTの人権問題に関するパネルディスカッションや市民権運動をテーマにしたイベントもおすすめだ。とにかく青空の下でお酒を飲みたい人やノリノリにダンスしたい人は、数多くある野外パーティをはしごしよう。飲み過ぎたときはアルコールフリースペースでまったり日向ぼっこもできる。個人的に、一番のお気に入りは最終日の夜だったりする。楽しかったプライドが終わりを迎えて、その余韻をできるだけ味わいたいのかチャーチストリートには人がごった返す。そんな祭りの後の虚しさをしみじみ感じながら、楽しかった思い出に浸るのが好きだ。
こんな多様でカラフルなイベントは他を探したってどこにもない。ぜひ足を運んで、ポジティブな雰囲気を楽しんで、元気いっぱいのコミュニティに囲まれて、LGBTのリッチな歴史を堪能して、プライドが存在する本当の意味を感じて帰ってほしい。