多文化共生を違う視点から見る

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.111 多文化共生を違う視点から見る

チャイナタウンを歩いていると「NO YSM」と書かれたポスターがそこかしこに貼られていた。YSMとはヤングストリート・ミッションというNPO団体のことで、ホームレスの若者を中心に、低所得層に向けたサービスを提供している。今回、彼らは現在ヤングストリートにあるホームレスユースセンターをチャイナタウンに移転することを発表したが、残念ながらチャイナタウンのビジネスオーナーたちはそのニュースを嬉しく思わなかった。このセンターの移転に伴って、ホームレスや問題を抱える若者がやってくるのを懸念したのだろう。それに抗議してシティホールでデモ活動まで行われた。この一連のニュースを見て、一番傷付いたのは実際にそのセンターのサービスを利用している若者たちだろう。こんな公の場で自分たちの存在をいらないと否定されたのだ。

これはチャイナタウンだけの問題ではない。あちらこちらで高層マンションが建ち、トロントはすざましいスピードで変わっている。低所得層のための公営住宅は再開発のターゲットとなり、貧しい人だけが取り残されたままスカイラインばかりが高くなっていく。長年都心部でサービスを提供してきたNPO団体は高騰した家賃が払えずに、もっと安い土地を探すようになった。チャイナタウンのように都心部からのアクセスが良くて家賃も手頃なエリアは、そうした団体にとってのオアシスのようなものだ。しかし、地価の下落やネガティブなイメージを恐れて、ホームレスや低所得層の人々を受け入れたくないというのがみんなの本音だ。ホームレスには心を痛めるけど、自分からは遠いどこかに行って欲しいのだろう。酷く冷え込む冬の夜に凍死したホームレスのニュースも所詮他人事だ。そうやってこの都市が抱える問題に背を向けても、それは無くならないどころかもっと深刻化する。

多文化共生というのがトロントの特色だというが、文化だけではなく、いかに様々な人たちが共に暮らせるかを考えていく必要がある。今回のチャイナタウンの抗議活動に限らず、トロントの発展と共により多くの問題は表面化するはずだ。そんなときに、この街の人たちは思いやりを忘れずにいられるだろうか。

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