仕方がないから結婚しよう

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.109 仕方がないから結婚しよう

日本に帰国して地元の同級生たちと久々に会えば積もる話もある。しかし、なぜだろう。ストレートの友人の間では、仕方なく結婚したという話ばかり耳にする。できちゃった婚はもちろん、学生時代からダラダラ付き合っていたら流れでそこまで好きでもないのに結婚した人や、独身で三十路を迎えたくないから急いで婚活してとりあえず結婚した人も多かった。人は情熱的に愛し合いながら結婚すると思っているとでも言えば、笑われそうな空気だった。

勤めている会社によっては、未だに結婚をしているかいないかが昇進に影響する。未婚の人は責任感がないというレッテルは健在だ。メディアの中の女性たちにはいつだって容赦なく「結婚はしないの?」という質問が投げかけられる。あたかもそれが唯一の正しい道なのかのように。選択肢が少ない環境で生きていれば、プレッシャーを感じる。本当にしたいわけじゃないのに、それしか選べないところまで追い詰められる。結婚をしなければ生きにくい社会がそこにはあって、そこからはみ出したくないから結婚をする。それでその人が幸せならいいが、好きでもない人やよく知らない人と結婚をして幸せになれる人は少ない。人間は一人一人違う道を歩いているんだから、みんなが20代に理想の人に出会えて、結婚して子供を持って、絵に描いたような家族を築くわけではない。むしろ、そんな人の方が少数派だろう。60代になって一緒になりたい人と出会える人もいれば、生涯そういったライフスタイルに興味を持たない人だっている。そうした違いを無視して、みんなを同じ形にハメても、いずれ大きな問題となって返ってくるだけだ。

結婚の話になる度に暗くなってしまう同級生たちを見ていると、ゲイとしてトロントに暮らす自分にはあまり直面しない問題でホッとする。一方で、そうやって融通の利かない社会は自分を含め、多くの人を傷つけると改めて痛感した。昔は結婚を「したいもの」として語っていた人たちが、いつしかそれを「しなきゃいけないもの」として語っている。それではあまりにも悲しい。もしもそんなプレッシャーのない世界だったら、彼らはどんな道を歩むのだろうか。

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