人生いろいろ、ゲイもいろいろ

キャシーのトロント不思議ハッテンは​、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。

キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第42回、人生いろいろ、ゲイもいろいろ

「脳腫瘍が見つかって、もうすぐ手術を受けるんだ。」そんな言葉が友達の口から飛び出して、返す言葉をなくしてしまった。ゲイだっていろんな人生を生きている。そんな当たり前のことを今更しみじみと感じた。

「こんなことになるなんて考えてもみなかった。人生観変わるよね。」長年連れ添ったパートナーと別れて、病気の治療に専念することにした彼はそう話してくれた。その彼からの突然のニュースはショックだったが、改めて自分の人生を見直すきっかけとなった。少し前まで、ゲイライフスタイルなんてものがあって、みんなそれなりに似たように生きると無意識に思っていた。要はあまり深く考えてなかったのだ。ピチピチタイツを履いたピーターパンではないが、今さえ楽しければいいという毎日が終わるのが嫌だったのかもしれない。心のどこかでそういうことを考えないように押さえつけていた。しかし、世の中そんなに甘くはない。見ていないときに限って、人生は容赦なくとんでもないストレートパンチを仕掛けてくる。どんなに構えていても、簡単にノックダウンされてしまう。

両親が離婚して、ギャンブルで借金を負った母親の面倒を見ることになった人。20年以上勤めた仕事を辞めた途端にHIV陽性だと発覚した人。立派なマイホームにパートナーと暮らしながら、鬱を患ってしまった人。心臓発作で体が不自由になった人。ここ数年で、力強く生きているゲイの人たちと出会う機会がたくさんあった。もちろん、こうした問題に直面するのはゲイだけはない。一方で、ゲイならではの生き苦しさはこうした人生の難関をより複雑にしたりもする。残念ながら、社会は未だにゲイに優しくない。ゲイだというだけで、そのパンチを何倍にも重く感じることだってあるかもしれない。

もしもいつか、自分も思いっきり人生のストレートパンチをくらってノックダウンしたら、また立ち上がって歩けるだろうか。何発もパンチをもらって、そのままあきらめてノックアウトされてしまうのだろうか。不思議なことに、実はそんなに心配はしていない。ゲイとして生きてきた自分だからこそ、何があろうと前を向いて歩き続ける強さがあると信じている。顔がボコボコになったって生きてやる。

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