キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第40回、友達の作り方を忘れたゲイたち
「ねぇ、友達ってどうやって作るんだっけ?」そんなシンプルな質問をタメのゲイ友達にぶつけてみると、きょとんとされた。三十路間近な私たちの周りに残っているのは、二十代前半に友情を築いだ人たちばかり。ここ数年、友達と呼べるような人にはほとんど出会っていない。聞けば、そう感じているのは自分だけではないとわかった。
不思議なことに、グラインダーなどの出会い系アプリを覗けば友達募集中が多数を占めている。需要と供給は釣り合っているように見えるのに、どうして友達と出会えない人がこんなに多いのだろうか。社会人になって、仕事が忙しくてなかなか時間がないのかもしれない。ソーシャルネットワークが発達して、人間付き合いがデジタル化してしまったせいなのかもしれない。しかし、ゲイコミュニティ特有の仲間意識はそんな壁など簡単に乗り越えられると思っていた。実際に友達募集中のゲイたちに声をかけてみると結果は様々だった。コーヒー飲みながら楽しくおしゃべりしたのにそれっきり会わなかった人がいれば、ベッドに直行してパコパコして終わった人もいた。多くに人に共通していたのは、友達作りにそこまで本気ではなかったということだ。同じく、自分自身にも友達を増やしたいというモチベーションが欠けていた。ただでさえ親しい友達と過ごせる時間が限られている中、新たな友達をねじ込むスペースはなかったように思えた。上辺だけ繕って、中身のない会話を重ねても苦痛なだけだ。ゲイが比較的受け入れられているトロントだからなおさら、ゲイコミュニティの中で友情を育む必要性も薄い。本当のところ、誰も友達なんて望んでいないのかもしれない。
そうやって諦めかけた頃、近所で犬を飼っている少し年上のゲイの方と知り合った。今では夕方に一緒に愛犬を散歩させるのが日課だ。いつの間にか、お互いの深いところまで話し合える関係がそこにはあった。あまりに楽に友達になったからか、少し信じ難い。思えば、昔はこうやって簡単に友達と出会っていた。いつからか、自分を守ることでいっぱいいっぱいになった。友達に恵まれなかったのは、自分をさらけ出すことを忘れてしまったせいだったのかもしれない。