セックス・アンド・ザ・キャシーは、LGBTのためのコミュニティサイト『2CHOPO』(にちょぽ)に2014年から2017年まで連載されていたコラムです。

セックス・アンド・ザ・キャシー(コラム連載アーカイブ)
第21回、初セックスのベストタイミングはいつなのか?
初めてのセックスをどのタイミングでするべきかは永遠の課題である。そこに答えはない。ケースバイケースだ。しかし、それでもそこにルールを設けたい人が山ほどいる。
付き合い始めた最初の3ヶ月は絶対にセックスはしちゃダメ!とか、初セックスのベストタイミングは3回目のデート!とか、こうした話を耳にしたことがある人は少なくないだろう。肉体関係をあっさり許しちゃうと軽い人だと思われる。焦らせば焦らすほど、相手は追いかけてくれる。セックスから始まる恋愛はすぐに飽きてしまって終わる。そんな根拠のないルールはあちこちに転がっている。これらに真実が混じっていないとは言わない。しかし、セックスという行為にあまりに重みを置きすぎて、余計なプレッシャーを与えている。過信は禁物だ。
そんなに遠く無い昔、世間の声を信じてみようと思って、両思いだった男性とセックスはせずにデートだけを重ねていた。それはそれで楽しかった。ロマンチックなディナーデートに出かけたり、カラオケでお互いにラブソング歌ったり、一緒に料理して映画見たりと、友達以上恋人未満な曖昧な関係は緊張感があってワクワクした。いつかセックスをする日がとても楽しみだったと同時に、少し怖かった。ある夜、彼は気合いの入った手料理を作ってくれて、満腹になってワインで少し赤くなった頃、私たちはソファーの上でキスをした。プレッシャーに負けたのか、元々相性が悪かったのか、いくらキスをしてもその気になれない。何も感じずに唖然として、着替えと歯ブラシを抱えて夜10時に帰宅した。その夜の出来事は最も苦い思い出のひとつとなった。
だからと言って、すぐにセックスをすればいいというわけでもない。いつだったか、こんなこともあった。セックス目的で出会った男性とベッドに飛び込む前に、お茶を飲みながらぎこちない世間話をしていると、昼ドラもビックリな急展開が訪れた。「これがファーストデートということにして、付き合わない?」急にそんなことを言われたので動揺しつつ、タイプだったので二つ返事であっさり同意した。次の瞬間、私たちはベッドの上で盛り上がっていた。その計画性も突拍子もない恋愛は猛スピードで盛り上がって、急激に萎んだ。決して悪くはなかったセックスを終えたふたりは、話題に困って無言のままだった。約3時間で自然消滅した最短恋愛だった。
こうした経験を重ねて、あることに気付いた。初セックスをするタイミングにそこまで影響力はない。まんまと影響されたのは、恋の駆け引きに気を取られすぎた自分だった。それ以来、セックスに対するスタンスを変えた。自分と相手がやりたかったらやる。どちらかがやりたくなかったらやらない。プレッシャーはかけないし、逆にかけられても動じない。セックスで終わる関係もあれば、セックスで始まる関係もある。人間と人間、もっとオーガニックでいいんだ。
結局、セックスはそこまで大げさに騒ぎ立てるほどのものではない。タブーなもの、卑猥なもの、口にしちゃいけないもの、大事に取っておくべきものと、セックスには様々なラベルが貼られている。気をつけないとそのラベルに流されて、そこにない意味に惑わされる。初セックスのタイミングなんて、私たちが思うほどに大事ではない。下らないラブゲームは、ベタなラブコメの中に引っ込んでいればいい。セックスにこびり付いた余計なラベルは全部剥がして、自分のものにしてしまおう。そっちの方がよっぽど大切だ。