キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第10回、バレンタインデーもゲイまっしぐら
年明け早々正月ボケなんかしてる暇のないトロント市民は、既にスーパーの棚にバレンタインデーに向けて飾り付けを始める。同じ頃、日本のお正月気分が抜けない自分は、仕事を軽くさぼってバレンタインデーのデートにピッタリなお洒落で美味しいレストラ ンを探すのに夢中になっていた。去年のバレンタインデーはカップルが賑わう交差点で彼氏と待ち合わせをした。約束の時間に現れた彼に花束をプレゼントしてから、二人で手を繋ぎながらレストランまで歩いた。そんな花束を抱えながら顔を赤らめる彼が可愛かったから、今年もどんなサプライズを用意できるかを考えながらレストランのレビューを読みふける。
よくよく考えてみれば、バレンタインデーに男同士で花束を持って歩けば、「私たちはゲイです」と顔に大きく書いて歩くようなもの。花束がなかったとしても、バレンタインデーの夜に着飾った男二人がデートスポットであるレストランに入れば、ゲイカップルだと一目瞭然だ。それなのに、去年のバレンタインデーはまるで自分たちがゲイであることを意識しなかった。なぜかといえば、ウェイターがとてもフレンドリーに対応してくれた上に、周りに座っている人たちからも視線を感じなかったからだ。こんなレストランに来ている客層にとっては、今更ゲイカップルで驚いたり拒否反応を示したりする方がトロントでは珍しいのだろう。もしこれがチャイナタウンの安いレストランだったなら、また話は別だったのかもしれない。
こうして男同士でバレンタインデーの日にデートを楽しめるのも、トロントに暮らしていると当たり前のように思えてしまう。社会がここまでゲイに理解を持つようになったのも、多くの人たちの努力によるものだ。今年のバレンタインデーも、感謝の気持ちを忘れずに胸を張って彼氏とラブラブするわ。