キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第8回、トロントのクリスマスとゲイファミリー
トロントに留学して最初のクリスマスのこと、あるゲイ友達の家にディナーに招かれた。ジューシーな七面鳥の丸焼きに、スパークリングワイン、そしてアップルパイと、貧乏学生だった自分にはとてもありつけない豪華な食事に驚いた。七面鳥の胸肉にクランベリーソースを豪快にかけて頬張る自分に、友達はこう言った。「クリスマスに寂しくないように、毎年家族のいないゲイ友達で集まってディナーするのが恒例なんだ。」
日本にいた頃、クリスマスの時期は毎年家に引きこもって年末特番を見ていた。ラブラブなカップルたちがあちこちでイチャイチャしている様は、独身でカミングアウトもしてなかった自分の目にはまるで世の終わりにように映った。トロントに来て、クリスマスはカップルの季節から家族の季節へと変わった。この街で知り合った友人たちも実家で家族と共にクリスマスを過ごすということで、母が日本にいる自分はまた一人となった。トロントで暮らす親戚の集まりに行って「結婚はまだか?」と尋問されるよりは、夜遅くまで開いているカフェで読書する方がマシだった。そんな寂しいクリスマスを迎えようとした自分にとって、その友達が主催したクリスマスディナーはまるで家族の集まりのように感じられた。
同性婚があるカナダでも、パートナーや家族がいない独身ゲイはたくさんいる。そんな中で友達同士、お互いを家族のように支え合って、助け合う。時には血の繋がった家族以上に強い絆で結ばれていたりする。このような家族の形はゲイファミリーやチョーズンファミリーとも呼ばれる。5年近くトロントで暮らしている自分も、今では立派なゲイファミリーに囲まれている。笑いが絶えない日もあれば、容赦なく喧嘩をする日もあるけれど、感謝祭も、クリスマスも、大晦日も、もう寂しくはなくなった。