逃げる留学をしなくてよかった

キャシーの日々ハッテンは​、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。

キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.28 逃げる留学をしなくてよかった

忙しい毎日に追われていたら、いつの間にかトロントに来て4年が経っていた。ふと古い日記をめくってみれば、日本を離れたばかりの頃の少しうぶな自分がいた。最初にトロントに留学しようと決めた理由は今でもハッキリ思い出せない。もしかしたら、ちゃんとした理由や目標なんてなかったのかもしれない。学生時代、ゲイとして自分を隠したまま日本で生きることが怖かった上に、自分に曖昧なまま社会に出る自信もなかった。青二才が言うのもおかしいけど、お先真っ暗だった。トロントに行けば、きっとそうして曖昧なまま人生の決断を先延ばしに出来て、あわよくば問題が解決すると考えてた。今となれば、そんな甘い考えでトロントに来なくて本当に良かったと思っている。

大学4年生になって留学が迫ったとき、このままトロントに行っても何も変わらずに帰って来て、同じ問題にまた直面すると気付いた。周りが変わるのを待つのではなく、自分から変わる必要があった。そう思い立った日、図書館で同性愛に関する本を手に取った。その数ヶ月後、まさか自分が東京のプライドパレードで顔も隠さずにマーチしていたなんてその時には予想もつかなかった。この21年間も肩に背負った大きな問題を自分の強みに変えられたからこそ、その後に待っていたトロントでのサバイバルのような過酷な4年間を切り抜けられたと今は考えている。

たまにワーホリや留学をしたい人に先輩としてアドバイスを聞かれる。正直なところ、「目標を立ててそれに向かって頑張れ」とは胸を張って言えない部分もある。ただ、何かから逃げるために留学やワーホリをするなら、その逃げているモノに立ち向うことを今の自分は勧めるだろう。

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