キャシーの日々ハッテンは、トロントの日本語情報誌『Bits』(ビッツマガジン)で2011年から2017年まで連載されていたコラムです。
キャシーの日々ハッテン(コラム連載アーカイブ)
Day.22 想像力豊かな人になりたい
久々に日本に戻ったら、地元の電車の駅が驚くくらいバリアフリーに改装されていた。トロントから担いで来た大荷物を背負って、とても階段を一人では降りられなかった自分にとっては、エレベーターがあって大いに助かった。それを嬉しそうに日本の友達に話したら、「自分が使いもしないものに、自分が払った税金を使われてもね」なんて冷たい反応をされた。確かに、その友達は普段エレベーターには乗らないのかもしれない。不景気な今、汗水たらして稼いだお金で払った税金を、自分に“必要がない”ものに使われるやるせない気持ちもわかる。しかし、車イスなしでは生活できない人や、年配の足腰の悪い人にとって、そのエレベーターはとても大切だ。それでも自分には関係ないと言い張る人は、その人のこれからの人生でそのエレベーターが必要ないと本当に言い切れるのか。もし事故で足を悪くしたとき、または妊娠して階段を降りるのがつらいとき、その人はいつまで白を切れるのだろう。
同性愛者の権利に理解ない人にも実は同じことが言える。その人がゲイではなくても、もしかしたらその人の子供がゲイだってこともある。そんなときに、同性愛に理解のない社会に苦しむのはその子供であって、その親だ。そんなときに、狭い日常にとらわれていると面白いように見えないものが見えてくる。よく道徳の時間に、他人の立場からも物事を考えてみようと教わったけど、それが出来ない人は多い。こんな少し余裕のない時代だからこそ、もっと多くの人が暮らしやすいように思い合える世界になれたらいいのに。