キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第35回、「で、いつ同性婚するの?」という質問
ゲイバーの片隅に座ってイケメンウォッチングをしていると、ビールをグイッと飲み干した隣の友人が「どいつもこいつもなんで同性婚はいつなんだって聞いて来るんだ?」と愚痴をこぼした。10年以上今の彼氏と交際している彼は、周りから結婚のプレッシャーをひしひしと感じているらしい。他の友達との何気ない会話でも、職場の上司や同僚からも、「いつ結婚するの?」という質問が絶えない。何より気まずいのが、彼氏の実家に訪れる時だそうだ。結婚式を楽しみにしている姑の嬉しそうな目を見るだけで、結婚の予定がない自分たちが急に悪人になったかのような気分を味わうという。
彼らは別に同性婚反対派ではない。ただ単に、今の自分たちの関係において、結婚をすることで得られるメリットが特にないのでしないだけだ。しかし、交際をするということの目的地が結婚しかないと思っている人からすれば、彼らは宇宙人とそう変わらない。そして、周りからの悪気のない「いつ結婚するの?」という小話も、積み重なれば圧力となって彼らにのしかかる。「同性愛解放運動で散々同性婚したいと騒いだのに、ゲイカップルとして結婚しないのはおかしいよ!」と説教をされたことまであるというから驚きだ。「自分らしく着飾って、自分らしく愛して、自分らしく生きる!」それが同性愛解放運動の目的だと勝手に思っていたが、思い切り誤解したのはどっちなのだろうか。どちらにしろ、長く交際していて結婚をするつもりのないトロントのゲイカップルたちは、ゲイ差別とは違った息苦しさを感じてるようだ。愚痴をこぼしながらビールを次々と飲み干す友人は相当ストレスが溜まっていた。
この夏で交際して4年になる私たちの場合、かなり前から結婚はしないと既に決めている。「いつ結婚するの?」という質問が飛んでくる前に、「結婚は無意味だと思ってるから!」と冷静に返すようにしている。「婚約指輪やウェディングでお金をドブに捨てるつもりはないしね!」ここまで言えば、向こうもドン引きしてそれ以上結婚の話はしなくなるし、友達も減るので一石二鳥だ。心配ならば、「結婚に命を懸けてる人もリスペクトしてるよ!」と最後に付け加えれば安心だ。