キャシーのトロント不思議ハッテンは、ゲイ総合情報誌『Badi』で2012年から2016年まで連載されていたコラムです。
キャシーのトロント不思議ハッテン(コラム連載アーカイブ)
第5回、カナダの田舎町でも彼氏と手を繋ぎたい
あっという間に短い夏が終わり、雪が降り積もる前にキングストンという田舎町にある友達の別荘に遊びに来た。クイーンズ大学があるキングストンは比較的大きめの町だが、ゲイバーやハッテン場はなく、ゲイオーナーが経営するクラブが一軒くらいしかない。もちろん、車で数時間かけてここに来た理由は男探しではない。オンタリオ州の広大で美しい自然に囲まれながら、ゆっくり羽を伸ばすためだ。
トロントに慣れたゲイたちがこんな田舎町に来て、何もトラブルがないわけがない。どこからどう見てもゲイにしか見えない7人が揃えば尚更だ。トロントならこの7人で最もゲイゲイしい格好で街に繰り出そうと「そのジャケットどこで買ったの?」とすれ違う女子に聞かれるくらいだろう。しかし、ここでは勝手が違う。いつも通りに歩いてるだけで、まるで有名人のようにジロジロ見られる。そんなことはお構いなしに、あたしは彼氏と手を繋ぎながらウィンドウショッピングに夢中になっていると、ふと背中に突き刺さる視線を感じた。振り向けば、決して友好的そうには見えないノンケカップルが後ろを歩いていた。そんなのは無視して、強気に手を繋げたまま歩いていたら、向こうは痺れを切らしたようで、道ばたに止まって「ゲイとかさ、別にいいんだけど…」とカップル会議を始めた。彼らの口から飛び出す内容は聞くまでもなかったわ。リベラルで、同性婚もあるカナダでも、一歩トロントのような都会から出れば未だに保守的な人は多い。こうしてゲイがゲイらしく羽を伸ばせるのも、国単位で同性愛が法律的に保護されているからだ。もちろん、あたしはそんな彼らの前で彼氏の額にキスをして、そのままウィンドウショッピングを続けたわ。