このブログでも数回取り上げているんですが。
トロントでは今、HIVへの偏見を取り除くキャンペーンに力を入れています。
このHIVstigma.comのウェブサイトの広告がけっこう各地で見かけられるんですが。
そのキャッチコピーっていうのが、これ。
「カミングアウトをするたびに拒絶されるだけなら、あなたはカミングアウトしますか?」
この文の主語はもちろん、HIV感染者。
トロントの法で、HIV陽性者は、HIV陰性者と性交する際、HIVであることをカミングアウトする必要があります。
もしカミングアウトをせず、HIVを感染させた場合、重い処罰が待っています。
この社会状況がHIV感染者に必要以上なプレッシャーを与えていないのか?
というのを問題意識に、このキャンペーンは行われています。
先日のパーティで。
自分の横に座っていた2人が、急にこのキャンペーンの話を始めて。
興味深いので、耳を傾けていたら。
こんなことを言い出したんです。
「あのキャンペーンって何?HIV陽性の人とセックスすることを推薦してるの?」
「HIVの感染を防ぐのが彼らの仕事なのに、反対のことをしてどうするんだ。」
キャシー、喉までいろいろ出掛かったんですが、一旦は飲み込む。
とりあえず、クリスマスパーティでもあったので、余計なトラブルは避けようと、冷静に意見を聞くことに。
パーティの後も、その人の言葉が頭の中でグルグル周ってて。
何か釈然としないまま、数日経ったある日。
友人の友人がHIVに感染したことを理由に自殺をしたことを知りました。
直接の友人ではないにしろ、非常に重く自分に圧し掛かりました。
HIVはもう死の病ではありません。
僕の周りでも数人薬を飲みながら、元気に仕事をしている人が居ます。
そりゃ、HIVに感染してない人に比べたら、大変なこともいろいろ増えます。
しかし、それが自殺の原因になるほど、深刻な病気ではないはずです。
HIV自体よりも、それを見る社会の意識が遥かに恐ろしいのです。
それがHIVをとんでもない病気のように仕立て上げているように、感じられて仕方ありません。
もし、HIVに感染したら。
あなたは自分の両親に言えますか?
あなたは自分の恋人に言えますか?
あなたは自分の友人に言えますか?
あなたは自分の子供に言えますか?
あなたは自分の職場に言えますか?
僕はゲイである自分を受け入れるまでに、本当に時間がかかった。
なぜなら、ゲイというのは、両親からも、友人からも、ほとんどの人からも差別されている存在だから。
自分がそんな存在だなんて認めたくありませんでした。
今は楽しくゲイとして生きている自分。
もし、ある日。
HIVに感染したとして。
怖いのは死ぬことより、もう一度周りの人に差別されること。
誰にも言えなくて、自分でも受け入れられなくて、押しつぶされるかもしれません。
自分が今このキャンペーンに興味を示しているのは。
それにHIVの本当に怖い部分を改善する可能性を感じているから。
「カミングアウトをするたびに拒絶されるだけなら、あなたはカミングアウトしますか?」
この文がHIV陽性者とのセックスを推薦しているように見えるのは確かです。
しかし、それ以上に深い意味がこの文にはあります。
このキャンペーンを通して、それが伝わっていければ良いのですが。