最低最悪、だから面白いカードゲーム。

新居に引越したばかりの友達が、ホームパーティに招待してくれたので。

美味しいピーチパイとワインを持って、彼と遊びに行ったの。

友達が張り切って作ったパエリアを食べて、みんなのお腹もいっぱいになったところで。

何かゲームしようってことになり、招いてくれた友達が目を光らせながら。

「そういえば、例のカードゲームが届いたんだ!」

と言って、そそくさと上の階に上がって行ったの。

「え、何?例のカードゲームって何?」

と全然付いて行けないあたしの目の前に出てきたのは。

Cards Against Humanity

直訳すれば、反人類カードゲーム。

あたしはこの時に初めてその存在を知ったんだけど。

どうやら、北米では最近発売されてけっこう噂になってたらしいの。

このカードゲームのルールはとてもシンプル。

プレイヤーはみんな「答えカード」を10枚ランダムに引く。

それから、一人が「質問カード」を引いて。

その他のプレイヤーがそれに合わせて「答えカード」を出す。

「質問カード」を引いたプレイヤーが、一番気に入った「答えカード」を選んで。

それを繰り返して、最後に一番多く選ばれたプレイヤーが勝つ。

有名なパーティゲームであるApples to Applesにそっくりなんだけど。

その内容が最悪で、最低で、もう冗談を通り越しているわけ。

ポップカルチャー、下ネタ、うんちネタとかも多いけど。

何より人種差別、性差別、社会格差、病気、貧富、戦争など、そんなのばかり。

しかも、勝つためには“面白い組み合わせ”を出さなければいけないので。

一番非倫理的で、普段はとても口にはできないことを言う羽目になる。

あたしはそんな恐ろしさも知らずに、誘われるがままにやったんだけど。

「第四次世界大戦に使われた最強の兵器は?」

という質問に、「ツイッター」が出てきたときは笑ったりしてたけど。

「老人はどんな臭い?」

という質問に、「アウシュビッツ強制収容所」が出てきたときは言葉を失ったわ。

ええ、ホロコーストネタも平気で出て来るの。

うちの彼なんか、「最近流行ってるダイエット法は?」という質問に。

セクシュアルヘルス教育者のあたしの前に、「エイズ」って出したのよ?

その場で別れ話するところだったわ。

そんな感じで、普段はネタに出来ないことをネタにして楽しむこのゲーム。

いつのまにか、あたしも次第に勝つためには手段を選ばなくなってたわ。

ちなみに、このカードゲームはほぼ発売後に即日完売だったらしいんだけど。

認めたくないけど、あたしもこの面白さには納得するしかないわ。

北米に住んでると、よく感じることがあるのよ。

人種差別とか、社会の中の差別や偏見はしっかり残ってるんだけど。

それが目に見えて表面化することってあんまりないのよ。

というのも、多くの人はそれを表さないように教育されているわけ。

ただ、見えないからってその問題自体は別に解決したわけじゃなくて。

ある意味、日常から言葉狩りがされただけと感じるときもある。

だからこそ、こうしてその言葉たちを穿り返すこのカードゲームは意外性がある。

言わないようにしているだけで、偏見自体はまだ社会に溢れている。

だからこそ、このゲームが面白くてたまらないのかもしれない。

キャシーの勝手な予想だけど。

このゲームを日本語で、日本の問題に置き換えてもそこまで受けないと思うの。

だって、日本に存在する多くの偏見は大多数の人に認識されてないから。

それが社会的に間違ってると知らなければ、冗談にもならないもの。

ユーモアのセンスだけで、いろいろ見えてくるわね。

そういえば、このゲームで遊んだ一週間後にうちに小包が届いたの。

開けてみれば、このカードゲームが入ってたわ。

うちの彼、そうとう気に入ったみたい。

ちなみに、公式サイトから無料でダウンロードもできるので。

これがいかに酷いのかを知りたいなら、ぜひ試してみて。

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