木曜日の夜、仕事から戻ればすぐにシャワーを浴びて、お気に入りのシャツに着替えてゲイタウンに駆け足で向かう。行きつけのピザ屋でさっさと空腹を満たして、まだ8時前なのに混んでいるゲイバーでなんとか空席を確保する。友達もしだいに集まって、乾杯しつつイケメン漁りに夢中になっていると、いつのまにか目当てのイベントが始まるのだ。

そう、ル・ポールのドラァグ・レースに今更ハマってるのよ。

もうシーズン11に突入しているこの定番シリーズを今年に入ってやっと初めて見た自分は周りから「ゲイ失格」だと呼ばれている。失格でも別に気にしないけど、自分が食わず嫌いだったのは認めよう。元々リアリティ・テレビって見ないし、ドラァグ・レースをゲイ・ステレオタイプたっぷりな内容のない番組だと勝手に決めつけていた。Netflixのオススメに何度登場してもずっと無視をしていた。
ドラァグ・レースにハマったきっかけは、友達の情熱的な誘いに負けて、ゲイバーで100人以上のゲイたちに囲まれてオール・スターズ4(ドラァグ・レースのスピンオフ)を見たときだった。ドラァグクイーンが登場するコンテストだということ以外何も知らず、カオスなエピソードにとても混乱したが、必死に競っているドラァグクイーンたちの気迫に魅入ってしまった。

さらに、それを観戦しているゲイバーの熱気が凄かった。みんなドラァグクイーンの名前や特徴を熟知していて、CMの合間に誰が最後まで勝ち残るのか真剣に議論していた。
「これはゲイのオリンピックだから。」
と、横で説明を入れてくる友達の言葉に納得するしかなかった。
次の日、Netflixでシーズン9マラソンを開始し、三日間でフィナーレまで完走。笑って、泣いて、ハラハラして、登場するドラァグクイーンたちに感情移入しまくりだった。エンターテイメントなのに教育的な要素もあって、差別や偏見、メンタルヘルス、HIV/AIDSなど、様々な社会問題にも触れている。何より、ドラァグクイーンのレベルが高過ぎて、今まで自分が抱いていたドラァグクイーンのイメージを良い意味で粉々に砕かれた。その瞬間から立派なドラァグ・レース・オタクに大変身。
2009年に始まって、今年10周年を迎えたル・ポールのドラァグ・レースは、シーズンを重ねる度に視聴者を増やし、ドラァグというアートとゲイカルチャーをメインストリームに広めたとよく言われている。番組に登場すればぐーんと知名度が上がり、ドラァグクイーンたちのキャリアアップにも貢献している。シーズン11ではトロント出身のBrooke Lynn Hytesが参加しているおかげで、トロントの観戦パーティの熱気が凄いことになっている。

前回のブログで今年は自分を大事にすると書いていたが、ル・ポールのドラァグ・レースがとても良い気分転換になっている。ここまでハマってしまったのも、友達と集まってビールを飲みながら毎週観戦しているからなのかもしれない。娯楽って大事ね。
そんなわけで、自分みたいにル・ポールのドラァグ・レースを食わず嫌いしている人や、このブログがきっかけで知ったという人がいれば、ぜひ見てみることをおすすめするわ。
ドラァグ・レース・JAPANなんていつの日か見れるかしら。