第4回 LGBTは日々多様化している(2017/09/10)
にじいろ交差点(iTunes / Google Play Music / libsyn)
キャシー:おはようございます。
まめた:おはようございまーす。
キャシー:いま、向こう何時ですか?
まめた:ここは、夜の9時ですね。
キャシー:夜の9時ですよね。何度ぐらいですか、いま日本。
まめた:日本はね、25度ぐらいかな。
キャシー:25度(笑)。こっちは、今朝10度。
まめた:えー、寒いね。
キャシー:すっごい寒い。残暑がまったくないという。
まめた:ははは(笑)。
キャシー:というわけで、エピソード4まで来ました。
まめた:はい。
キャシー:一応これ、リスナーに対するネタバレなんですけど、このpodcast、月1収録で、月2エピソード更新みたいな感じになってます。
まめた:そうなんです、実は。
キャシー:別に隠してたわけじゃないんですけど。
まめた:(笑)。
キャシー:ははは(笑)。で、このpodcast、まめたさんと全く打ち合わせとか、Facebookでチャットしてるぐらいで、実際に話して打ち合わせする、まったくそういう機会がないので、ほんとに。
まめた:ぶっつけ本番。
キャシー:ぶっつけ本番。1ヶ月ぶりに話すよね、たぶんこれ。
まめた:そう。何かね、ひさびさ感がある。
キャシー:ひさびさだね。
まめた:うん、懐かしい。
キャシー:どう? 最近。
まめた:最近はね、何してんだろ……あ! 明日、自分が通ってた中学校と高校に行って、先生向けの研修をすることになりました。
キャシー:すごい(笑)。
まめた:怖いんだけど。はっはっは(笑)。超喋りづらいんだけど(笑)。先生みんな知ってるみたいな。
キャシー:あ、みんな知ってるんだ? すごいね。
まめた:そう。超やりづらい(笑)。
キャシー:高校とか中学のときは、カミングアウトしてたとか、いろいろそういう取り組みとかやってたの? 学校で。
まめた:いやー、先生にカミングアウトして、当時セーラー服の学校に通ってたんですけど、女子高で、制服嫌で、先生とかに言って変えてもらおうとしたんだけど、だめだったのね。っていういわくがあって。その先生とか来てるかもしれないじゃん?
キャシー:あ、そうだね。
まめた:うん。
キャシー:でも、そこから時間もだいぶ経ってるから、何か変わってるかもしれないし、変わってないかもしれないね。
まめた:そう。期待して行きたいなと思ってます。
キャシー:ぜひ来月の収録のときに結果を教えてください(笑)。
まめた:はい。最近どうですか?
キャシー:最近は、うーん、何してるんだろう、すごく忙しいです。いまオリエンテーションの時期なんですよ、トロントの。で、新しい大学生がバンバン来ていて。で、オリエンテーションのプレゼンテーションに行って、LGBTの紹介を各所でしてます。
まめた:おー。そっか、9月入学だからね。
キャシー:9月入学だから、そうそうそう。だから、前回のpodcastで話した「LGBTをどう語るか」っていう部分がとても難しくて、しかも3分の間にLGBTの説明とか、そういうことをリクエストされて、もうホント無理難題ばかりです。そんなわけで、今日の話なんですけど、前回、多様化していくLGBTのアイデンティティたちの話をしようってしてたじゃないですか。ちょっと、トロントで仕事してたときのエピソードがあって、前の仕事、結構、高校とか中学に行ったり、クラスルームだったりゲイ・ストレート・アライアンスが結構いっぱいあるから、そういうグループに直接行ってこういうワークショップやったりするんだけど、何か、若い人たちのアイデンティティがすごく細分化している。
まめた:ほー。
キャシー:うん。毎回、僕が入ってきて、LGBTのワークショップをしようってなってるんだけど、逆に僕が教わってるみたいな感じになってて。分からないから。結構、例とかをいっぱい持って来たんだけど、今日は。フレイセクシュアルって知ってる?
まめた:フレイセクシュアル?
キャシー:うん。
まめた:全然分かんない。
キャシー:全然分かんない? デミセクシュアルとか聞いたことある?
まめた:デミセクシュアルは聞いたことあるけど、説明できない。ははは(笑)。
キャシー:あー。アロマンティックとかは?
まめた:あのねー、「ア」が付くやつがいくつかあるのは知ってる。
キャシー:うん。一応、アセクシュアルは結構メジャーだと思うんだけど、性的指向がないとか、相手に性的な欲求を感じないとか、いろいろ人によって結構解釈は違うんだけど、アセクシュアルっていうのがあって。アロマンティックは親密な関係とか、そういう感情を抱かないとか、そういうアイデンティティで。デミセクシュアルは逆に、親密な関係がないと性的な欲求を抱かないとか。
まめた:ほー。
キャシー:フレイセクシュアルは、その逆。親密になっていくほど性的な欲求、性的指向がなくなっていくみたいな、そんな。
まめた:切ない。
キャシー:切ないのかな。その、個人的に、僕かなりフレイセクシュアルなほうだと思うんだけど、うん。
まめた:何かすごい、気になりますね。
キャシー:何が気になるの?
まめた:それは、付き合って長くなると、徐々に減っていくみたいな?
キャシー:そうそう。で、こういう言葉とかも、すごい新しいから、解釈とかも、たぶんかなり曖昧な場所にあって、常に新しい言葉作りがされている感じ。それと同じように、ジェンダーに関する言葉作りも最近かなり増えてきたなと思ってて、ジェンダークリエイティブとか。
まめた:クリエイティブ?
キャシー:うん。カナダに「ジェンダークリエイティブキッズ・カナダ」みたいな団体があって。
まめた:かっこいい!
キャシー:かっこいいよね。ジェンダークリエイティブっていいなと思って。
まめた:楽しそう。
キャシー:そう。で、そういう言葉がどんどん新しく生まれて来ている現象に、すごくいつもインスパイアされていて。
まめた:うんうん。
キャシー:うん。LGBTだけじゃなくて、どんどん、マイノリティの中のマイノリティとか、もっと自分により近い、より説明しやすい言葉が作られていくことについて、いま考えてる。
まめた:何かあの、でも自分も、高校生とか大学生に会うと、知らない言葉喋ってますよ。だから、デミセクシュアルとかも聞いたことあるし、だいたい毎回その意味が分かんなくて、訊いてる。で、例えばデミセクシュアルって言ってる子とか、やっぱりいたりするんだけど、毎回「どういう意味なの」とか、「何でそういうふうに名乗るようになってるのか」とか、その背景みたいなところが自分は興味があるから、訊いてみたりとかしてる。
キャシー:例えばどういう背景? シェアできる範囲で。
まめた:うーん、そうだね。例えば、友達を好きになっちゃうことが多いみたいな話をしてる子がいて、デミセクシュアルの子で。で、やっぱ仲良くなっちゃうとすごい好きになって、でも叶わないことが多いとか、そういう話をしてくれたりとか。なるほどなあと思って。
キャシー:そういう言葉とかは、浸透してる気がする?
まめた:ネットとか、特にツイッターとかでは結構見たりするんだよね。
キャシー:こっちも、北米とか、若者のそういう言葉が広がっていくのも、やっぱりタンブラーとか、ソーシャルメディアの上……みんな、すごい、ストーリーテリングとかを使って自分のアイデンティティの形成とかをしてる。すごい時代になってるね、と思って。
まめた:日本でもね、面白くって、Xジェンダーって言葉があって、カナダでなんて言うのかな。
キャシー:Xジェンダーっていうのは、どう説明する?
まめた:一応ね、「男性でも女性でもない」とか、「どちらでもある」とか、ぐらいの定義みたいなんだけど、人によって全然違うんだよね。「Xジェンダーです」って言ってる人のXジェンダーの意味は、実はその人によって結構違ってたりして。
キャシー:はあ。
まめた:その研究をしてる人がいて。
キャシー:うん。
まめた:「Xジェンダーです」って言ってる人に、それがどういう感じなのかってことを訊いてる人がいて、Xジェンダーって言葉を知ったきっかけとかは、ツイッターとかSNSとか、そういうものを通じて、例えば「男でも女でもない」とか、そういう言葉を検索するとそういうのが出てきたりとか。
キャシー:一応、Xって昔から、日本にいた頃から結構使ってた人がいっぱいいて、MtXとかFtXとか使ってた人がいて、Xジェンダーっていうのは知ってたんだけど、あんまりトロントでは使ってる人を見たことがなくて。いまよく使われているのが、ジェンダークィアか、ノンバイナリー。ノンバイナリーが「女性と男性っていう区分けに従わない」みたいな感じで、いま話してたXジェンダーに近いかもしれないんだけど、ジェンダークィアはもうちょっと政治的な部分も入ってきて。あと、アジェンダーとかもある。
まめた:アジェンダーって何?
キャシー:ミーティングのアジェンダじゃなくて、「ア」に「ジェンダー」……ジェンダー自体がない人。
まめた:日本だとね、Xジェンダーが最初に出始めたときってのは、結構トランスのコミュニティとかで語られることが多くって、自分のイメージだけど、例えばホルモン治療とか、胸を取るとかしてる人でもXジェンダーの人がいたりとかっていう印象があったんだけど、人によっては体の違和感が別になかったりとか、あと、ちょっとフェミニストっぽいと思うんだけど、典型的な「男らしさ」「女らしさ」に対するアンチの馴染めなさとか、そういうところからXジェンダーって言ってる人もいるし、意味合いは全然違うし、その人の選択してる見た目のプレゼンテーションというのは、外見とか服装とか体の捉え方とか、ほんとに一人一人違うから、面白いと言うか、聞いてみないとXジェンダーの意味が分からないんだよね。
キャシー:結構、新しい言葉に共通してるよね、そういうところは。人によって使い方が違うし、人によって解釈が違うし。トロントで研究とかしてるんだけど、サーベイの選択肢みたいなのあるじゃん? ジェンダーの選択肢。昔はmale・female・transとか、そういう感じで書いてあったんだけど、最近はmale・female・trans・non-binaryになってきて、トランスとノンバイナリーが分かれてきた、っていう部分があって。
まめた:male・femaleにトランスは入らないの?
キャシー:あー、一応、male・femaleも場合によってはカギカッコでtransとcis、どっちも、とか。
まめた:なるほどね。ほお、ほお。
キャシー:あと、詳しいサーベイになってくると、cis male・cis femaleとか。あと、male・female・transのほかに「cisかtransか」みたいな、そういう選択肢があったりする。
まめた:なるほど。項目がどんどん増えていくね。
キャシー:項目がどんどん増えていく。サーベイ作るときはすごく大変。やっぱり、どうやって複雑なアイデンティティたちをキャプチャーするのかみたいな感じで。
まめた:何か、自分も前に大学生に話をしてて、バイセクシュアルの人の話をしてたら、「それはパンセクシュアルじゃないか」って言われたことがあって。それは、トランスジェンダーの人を好きになったり、好きになる人の性別をあんまり問わない人の話をしてたときに、「それはバイというよりパンではないか」みたいなことを言われたことがあって、そのときちょっと考えたのが、そもそもバイセクシュアルの人たちの語りとかって、あんまり日本に暮らしててそんなに多く目にしないなってことを思ったんですよ。だから、バイって言ってる人も、バイセクシュアルの意味合いとか、どういう感じなのかってホント一人一人違ってたりするし、それを思うとLGBTとかも、トランスって言ってるけど結構違ってたりとか、やっぱり聞いてみないと分かんないなって思うとこが結構多いなと思ったんですよね。
キャシー:そのトランスとかバイセクシュアルの話なんだけど、トランスとかも、最近は「トランスジェンダー」じゃなくて、トランスに*が付いたやつ(trans*)があって。
まめた:そうそうそう。あれ、何て読むんだっけ?
キャシー:一応「トランス」なんだけど、下に……何て言うの、脚注って言うの? それでトランスのアイデンティティを全部リストアップしたりとかするし。trans* (all trans identities) みたいな、そういう感じで。あと、バイセクシュアルも面白い部分。過去に男性、女性みたいな、すごく区分けが強い時代の言葉がバイセクシュアルだと思うんだけど、最近どんどんそれが変わってきて、パンセクシュアルを使う人が増えてきた気がする。
まめた:最近、日本もそうだね。
キャシー:そう?
まめた:うん、そう思う。若い人とか特にそうだし。何であえてバイセクシュアルって名乗るんだろう。いまのネット環境とかを見て、「自分はこれかな」って見てる人にとって、たぶんパンセクシュアルの方がむしろ多く見れる言葉なんじゃないかなと思う。
キャシー:うん。
まめた:でも、20年ぐらいずっとコミュニティにいる人とかは、ずっとバイセクシュアルって言葉を大事にして使っていたりするし、その人のバイセクシュアルって言葉の深さみたいなものが自分は結構好きだったりして。だから何か、言葉は言葉であるけど、その人がどういうことを伝えようとしてるかみたいなことのほうが興味あるかな。
キャシー:そうだね。そういう物語の部分が大事だね。
まめた:自分はデミセクシュアルなのかなあとか、考え始めた。
キャシー:何が?
まめた:自分はデミセクシュアルなのかなあ。
キャシー:ちょっと待って、まめたさん。一番いいところで音が途切れた。ちょっと待って待って!
まめた:いや、自分はデミセクシュアルなのかどうかが気になり始めたけど、でも別にあえて名前を付けなくてもいい気もする。
キャシー:ちょっと、すごい気になるから、もうちょっと教えてよ。
まめた:えー、何だろ、あんまり性欲がなくて、だいぶ関係性とか盛り上がらないと性欲があんまりないね。
キャシー:うーん、僕とは真逆だね、そしたら。知れば知るほど興味がなくなっていく。性的な興味がね、なくなっていく部分があって。
まめた:出会った瞬間が一番?
キャシー:出会った瞬間って言うか、知らない人のほうがいいみたいな(笑)。はっはっは(笑)。
まめた:はっはっはっは(笑)。それ面白いね。
キャシー:それはゲイカルチャーの部分があるかもしれないんだけど。
まめた:すごいな。でも、すごい興味がある。
キャシー:それをこの前友達と話していて、昔はすごくそれが、例えば出会った人と2、3回会ったあとは、もうあんまり性的な欲求がなくなっていくことにすごく不安を感じたり、そういうふうに感じてしまう自分にかなりクリティカルだったんだけど、最近は、仕方ないから、もういいやっていう感じになってきて、吹っ切れて。友達に話したら、意外にそう感じる人は結構いるみたいで。で、昨日podcastの準備中にサーチをしてたら、この言葉に出会って、「あ、自分だ」って(笑)。でも、まめたさんが言ったみたいに、あえて言葉で説明する必要もないのかなと思っていて。自分がいる立場からするとね。やっぱり中学校とか高校のときって、言葉があること自体がとても救いになる部分があるでしょ? 例えば、自分はゲイっていう言葉を中学校のときに学んで、すごく自分自身の形成に役立った気がする。
まめた:そうだよね。自分も、トランスジェンダーって言葉を知ったときに、すごい嬉しかったよね。素晴らしい言葉だと思った。高校1年のときかな、ネット検索してて、最初に出てきたのは性同一性障害が出てきたんだけど、何かトランスという字面にとてもいいものを感じましたよ、うん。
キャシー:どういう関係を持った? その言葉と。
まめた:トランスジェンダーって書いて出てくるいろんな日記とか、当事者の人のホームページとかを見ると、自分が普段考えてることが……脳みそがそこに流出してるぐらい「あ、それ!」みたいな、「めっちゃ分かる!」みたいなことが多くって、逆に、「自分がトランスじゃなければ、世界の誰もトランスじゃない!」ぐらいのことを思ったりした。
キャシー:すごいね、それは。いいね。
まめた:でも、自分がそうなのかなと思ってるときは、ずっとネットで見たり書いたりすることがすごく多くて、実際にコミュニティに足を運ぶのは2年ぐらい時間が経ってるんだけど、そのときは、「このトランスのコミュニティで友達が見つからなかったら、自分は独りぼっちなんじゃないか」とか思ったりとか。
キャシー:あー、それは不安だね。
まめた:これだけ自分とぴったりくると思ってるのに、もし全然話が合わなかったらどうしようみたいな、それはそれで困るなあと思ったりとか。
キャシー:話は合った?
まめた:あのね、グループに行ったら、一人しかいなかったんですよ。
キャシー:ははは(笑)。
まめた:正確には、最初に行ったグループが「おにいちゃんの時間」っていう、中野にあるラウドで開かれてたグループで、最初はFtM、トランス男性の人とそのパートナーの人が二人のところにガチャッと入って行って、「グループじゃないの?」って言ったら「グループですよ」って言われて、そのあとに紹介された横浜のグループに行ったら、主催者の人が一人だけ部屋に座ってたの。「グループですよね?」って訊いたら「グループです」って言われて。
二人:はっはっはっは(笑)。
まめた:それがトランスのコミュニティデビューでした。
キャシー:ははははは(笑)。
まめた:いろんな不安が全部崩れた瞬間。
キャシー:ははは(笑)。逆にそれがモチベーションになって、コミュニティ作りにいま励んでるかもしれない。はっはっは(笑)。
まめた:面白かったですよ(笑)。
キャシー:面白かった? ははは(笑)。でも、ごめん、その、笑ってるのが、トロントで聞いた話を思い出していて、この前も話したけど、インターセクションにいる人たちが自分たちの居場所を探す……例えばアジア系でトランスとか、イスラム教徒でトランスとかゲイとか、そういうインターセクションの居場所を探すときに、グループとかネットで見つけて行くと一人とか二人とかしかいなかったりするエピソードがいっぱいあって。
まめた:それはそれで貴重な出会いだと思うんだよ。
キャシー:そうそうそうそうそう。
まめた:絶対一生忘れないよね。
キャシー:そこから始まって、いま団体になったっていう場所も結構あって、結構その歴史の部分で、歴史を学ぼうみたいな感じのイベントに行くとそういうエピソードを結構聞いたりする。だから、グループに行って一人しかいなくても諦めないでください、っていうメッセージ(笑)。
まめた:ははは(笑)。でも、何か、どこにでも行けるから、すごいワクワクするよ。一人とかね。
キャシー:で、ちょっと質問があるんだけど。
まめた:はいはい。
キャシー:さっき、性同一性障害が出てきたって言ったじゃん、検索してるとき、トランスジェンダーを。いまは、日本でトランスジェンダーっていう言葉と性同一性障害っていう言葉は、どういう関係とか、どういう感じで使われてるの?
まめた:難しくって、あのね、性同一性障害って言葉のほうが全然有名で、トランスジェンダーはそれに比べたら全然知名度下がると思うんだよね。基本的には、トランスの人たちは何かしらの病気の枠組みで捉えてる人がいまの日本では結構多いから、そういう意味では、性同一性障害って言葉のほうが、そういう、ある種の病気とか、そういう捉え方のほうがポピュラーな捉え方かなと思うんだよね。
キャシー:うん。
まめた:自分なんかは、トランスジェンダーっていうアイデンティティのほうが気に入ってるんだけど、生活していくうえで、例えば自分はホルモン注射をしたいと思って、16歳のときかな、ジェンダークリニックってところに通って、性同一性障害っていう診断をもらって、結局そのあとホルモン治療とかはせずに診断書だけ宙ぶらりんに存在するみたいな感じになってるから、「性同一性障害ですか?」って訊かれたら、まあそうなんだけど、でもあんまり積極的にそういうことを名乗りたいわけじゃなかったりとか。性同一性障害って疾患の名前だから、他の人、医者とか、そういう人が自分をどう捉えるかみたいな感じで、自分が自分のことをどう捉えるのかっていうところからいくと、自分はトランスジェンダーっていう言葉のほうが好き。一方で、「自分は性同一性障害です」って言ってる人も、まだまだたくさんいる。
キャシー:はあ。この質問をしたっていうのも、いまカナダで「誰がトランスジェンダーなのか」っていう話が盛り上がってきていて、身分証明書で名前を変えたりとか性別を変えたりするときに、誰ができるのかっていう話になってくるじゃない? 例えば、昔はオペをしていないとできなかったりとかがあったんだけど、数年前にオンタリオ州だと、オペとかしてなくても、どこまで緩いのか分からないけど、性自認だけで名前が変えられたりとか性別が変えられたりとかするし、大学とかでも、身分証明にある名前を自分が使いたい名前に変えてもらうとか、そういうことができたりするし。だから、昔はもっと性同一性障害で、障害があるから、障害のための受け入れ態勢っていう部分から、トランスジェンダーっていうコミュニティがあって、トランスジェンダーっていうふうに自認する人たちがいるから、この人たちのためにシステムを作っていこうっていう部分に話が変わってきている感じがして。最近ニュースになったのが、ジェンダーフリーの赤ちゃん、出生証明書に性別の明記がない赤ちゃんが初めて生まれたとか。あと、カナダの人権法にジェンダー・アイデンティティとジェンダー・エクスプレッションが含まれることになる……もう含まれる方向になっていくと思うから。オンタリオでは、もうあるんだけど。カナダ全体でジェンダー・アイデンティティとジェンダー・エクスプレッションが人権になるから、それを理由に差別とか偏見をすれば、かなり問題になってくる。だから、国自体もそれに従ってシステムが変わっていくのかなと思って。
まめた:そうだねー。日本も、「診断書を持って来てください」って言われることは、場面によってはまだたくさんあって、でも別になくてもいいじゃんとか、別に必要ないっていう場面では自己申告だけで変えれることはあるよね。まあ、場所によるって感じだね。
キャシー:あ、そうなんだ。
まめた:名前に関しては、診断書さえあれば、別に手術とかしてなくても、これも地域とか家庭裁判所の人の判断によるんだけど、いまは診断書一枚あれば何とかなることが多い。まあ、何で診断書いるんだって話はあるけど。
キャシー:じゃあ、昔よりは、やりやすくなったって感じ?
まめた:そうそう。
キャシー:はあ。で、日本で性同一性障害がトランスジェンダーより知名度があるって話をしてたじゃない? 個人的に覚えてるのが、日本にいた頃、結構チャリティ・テレビとか、そういう感じの番組とかで、かわいそうみたいな感じで、性同一性障害がすごくメディアに登場してた時期だったと思うんだよね。『金八先生』とか、あったよね。上戸彩が何かやってたよね、確か。
まめた:そう、大変そうだった。
キャシー:大変そうだった?
まめた:何だろう、いまでもすごく覚えてるんだけど、上戸彩がカミングアウトする授業か何かがあって、保健室の先生が黒板に文字を書こうとするんだけど、手が震えてチョークが折れるんだよ、バキッて。
キャシー:うん。ははは(笑)。
まめた:すごい、あの、何だろう、すごくアンタッチャブルなイメージを植え付けてるんじゃないかと思って。授業で扱うにあたって。そんな大変なことなんだ、みたいな。時代を感じさせるよね。いま、そういう表現の仕方するのかね。どうなんでしょう。
キャシー:メディアに登場してる? トランスジェンダーの人たちとか。
まめた:出る出る。
キャシー:で、結構トランスジェンダーのカミングアウトしたタレントさんたちとか登場したよね。
まめた:ね。中村中さんとかね。歌手で、紅白歌合戦のときに紅組から出て、中居くんが手紙を読んだりとかしてね。
キャシー:それもだいぶ前だよね。
まめた:結構前だね。
キャシー:あと、もう一人タレントさんいなかった?
まめた:誰だかな……はるな愛?
キャシー:はるな愛さん、そうそう。
まめた:あの人は、やっぱタレントで、人を笑わせる感じのキャラクターだよね。楽しませる系だよね。何か、シリアスな性同一性障害のイメージと、テレビの楽しいオネエキャラってのがすごい乖離してて、日本って。性同一性障害っていうと真面目なイメージ。だけど、オネエっていうと、すごい全然違う感じになる。
キャシー:はあ。
まめた:たぶん、はるな愛が性同一性障害で番組作ったら、すごいシリアスな話になるんだと思う。
キャシー:あー、何か番組作れそうだね。
まめた:ははは(笑)。
キャシー:はっはっは(笑)。で、このエピソードで、すごく、こうやってアイデンティティがどんどん細分化していく話をして、若い層とかでどんどん可視化されていく部分があると思うんだけど、メディアとか、一般大衆みたいな間では、やっぱりオネエとか性同一性障害とか「LGBT」のまま? 進んでる感じがする?
まめた:しないなあ。うーん。
キャシー:しない? きっぱり(笑)。
まめた:しない。しません。ははは(笑)。
キャシー:しません。はい(笑)。
まめた:サブカルとかでねえ、サブカルチャーとか漫画の中とかはいろいろどんどん増えてく気はするけど。やっぱり、なかなか……
キャシー:あー、漫画の中で? 増えてる?
まめた:増えてるっていうか、描き方はどんどん……性の描き方はどんどんどんどん、何て言うか、ファンタジーな部分も含めて、すごく増えていくんだけど、それが、よりメジャーなメディアとかに対して影響を与える気がしないんだよね。
キャシー:かなしいね。
まめた:どうだろうね。でも、これから変わるかもしれないしね。
キャシー:変わってほしいね、どんどん。
まめた:変わりましょう……分かんないけど。変えましょう(笑)。
キャシー:ははは(笑)。変えていきましょう、はい。じゃあ、まめたさんがトイレに行くということで。
まめた:それは放送に……
キャシー:これは放送します(笑)。
まめた:何でだよー! はっはっはっは(笑)。
キャシー:ははは(笑)。僕もあとでトイレ行くから大丈夫。一緒に、別々に、インターナショナルにトイレに行きましょう。
まめた:じゃあ、またあとで(笑)。