『日本でLGBTという言葉が浸透して、何が変わった?』ポッドキャスト:にじいろ交差点・第3回 テキスト by 桜井弓月

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第3 日本でLGBTという言葉が浸透して、何が変わった?2017/8/27

にじいろ交差点(iTunes / Google Play Music / libsyn

キャシー:あははは(笑)。

まめた:汗をダラダラ流しながら(笑)。

キャシー:そう、すごい濡れ濡れです。

まめた:ははは(笑)。

キャシー:はい。というわけで、エピソード3に来ましたけど。

まめた:はい。

キャシー:どうですか、まめたさん。

まめた:また「にじいろ交差点」を言いたい。

キャシー:また言うの? ははは(笑)。じゃあ、やってみよう(笑)。じゃあ、「にじいろ」って僕が言って、まめたさんが「交差点」って言って、で、12、せーので……

まめた:「LGBTの多様性を語るpodcast

キャシー:そうそうそうそう。じゃあ行くよ?

まめた:うん。

キャシー:にじいろ!

まめた:交差点!

キャシー:12、せーの!

二人:LGBTの多様性を語るpodcast(最後のほうは微妙にズレながら二人で言う)

まめた:ははは(笑)。

キャシー:どうだった? 微妙だね。

まめた:今までの中で一番言えてると思うよ?

キャシー:うん、ポジティブ思考はいいと思うよ(笑)。

まめた:だんだん成功に。

キャシー:うん、だんだん完璧なオープニングにしていこう。というわけで、今回のエピソード、いきなり本題に入ろうと思うんだけど、日本の話を聞きたい。

まめた:日本のLGBTコミュニティについて。

キャシー:そう。個人的にシェアしたいのが、2015年の秋に日本に一回帰国して、そのときに初めてうちのパートナーと一緒に日本に行ったのね。で、二人で電車に乗っていて、日本の電車ってモニターがあるじゃん?ニュースとか流れてるのがあって。で、僕のパートナーがすごいつんつんしてくるから、何?と思って話を聞いたら、モニター内のニュースのテロップに「LGBT」って書いてあって。

まめた:あははは(笑)。

キャシー:それにすごいショックを受けた。

まめた:おー、たしかに。

キャシー:すんごいショックを受けた。

まめた:考えられないことだよ、それは。

キャシー:ほんとに。

まめた:10年前を考えると、考えられないことだよ。

キャシー:うん。その話が聞きたい。何があったの?(笑)。

まめた:ははは(笑)。一応、その、きっかけは週刊誌かな。ビジネス系の雑誌がLGBT市場について特集を出したってことを皮切りに、LGBTブームってのがやって来たっていうことになってるらしいんだけど、たぶんそれだけじゃないと思うんだけど、例えば2007年とか、それぐらいのときに比べると、比べものにならないぐらい、いまLGBTのことっていうのは普通に新聞とかニュースで取り上げられるし、そもそもLGBTって言葉が見出しで注釈なく使われること自体に、いまだにちょっと衝撃を覚えるんだよね。

キャシー:はぁー。でも、ほんとだよね。ブログを9年前に始めたときにカテゴリーとかがあってさ、LGBTとかなかったから、オカマで始めたのね。

まめた:へぇ。

キャシー:そう(笑)。これ選びたくないなと思ったんだけど、それしかないから。

まめた:他にないから。

キャシー:うん。で、記事とか書くときとかも、LGBTって書いたら、LGBTを知らない人たちに伝わるかどうかも分からなくて、ほんとに毎回困ってたの、言葉がなくて。

まめた:だって、新聞の見出しとかって、「性的少数者」とか、せいぜいそんなもんしかなかったと思うんだよね。

キャシー:そうだね。

まめた:何かでも、いまだに、ほんとに伝わるのかなって心配になるけどね。市民講座とかやっても、「知ってますか、LGBT」みたいな。知らない人は来ないもん、「知ってますか?」って言ってるけど。興味を持って来る人は、何のことかおぼろげながら分かる人が来ると思うから。「知ってますか?」と組み合わせで使えること自体がすごいと思う。

キャシー:そうだね、すごいね。まめたさんが言う通り、言葉は浸透してるけど、実際どこまで理解されてるのかっていうところは、ちょっと分からない。

まめた:ドキドキするね。

キャシー:ははは(笑)。

まめた:今日この話をしたいと思ったのがあって、去年、某毎日新聞っていう……某を付ける意味が全くなかったわ。毎日新聞の記者さんの有志の勉強会に呼ばれたんですよ。

キャシー:うん!

まめた:毎日新聞っていうのは、LGBTのことを結構前から取り上げてた新聞の一つなんだけど、記者さんが記事を書くうえで悩むと。悩むので、一回いろいろ勉強したいっていうことで、有志のライターの人で、記者さんと勉強会やったんですよ。で、面白かったのは、見出しをね、どういう見出しを付けるかっていうので、百何件とかの数……LGBT 理解を」っていう見出しだったらしいんですよ。「LGBT 理解」とか「性的少数者 理解」っていう見出しがやたら多くって。でも、漠然としすぎていると、記者さんが言うに。で、どういうふうに見出しを付けていいか分からないから、そういう見出しが増えちゃうんだけど、実はそれがちゃんとそのイベントについて適切に描いてるものかっていうと、必ずしも見出しとして、ぼやんとしてたりとか。あと、例えばトランスジェンダーについてどういうふうに書いたら適切なのかとか。結構、記者の人も悩んでて、っていう中で勉強会やったんですよ。

キャシー:うーん、面白いね、それ。

まめた:そう。で、やっぱり結構ニュースになるし、発信する人もどんどん増えてて、これまでだったら当事者団体の人とかぐらいしか発信してなかったのが、今はウェブニュースとか、これまで関心のなかった新聞記者さんとか、あるいは個人でLGBTについて語っていく場面っていうのも、実はどんどんどんどん増えてて、昔と比べて最近っていうのは、LGBTに発信するメディアっていうのがどんどん増えていると。そのメディアっていうのは、マスメディアだけじゃなくって、いろんな団体とか、いろんな企業の担当者とか個人とか、発信する人が非常にいま増えてるっていうのが、ここ最近の一番の変化かなっていうふうに思ってるんだよね。

キャシー:はあ。その毎日新聞の勉強会の結論は何だったの? 結論というか、学習点とか、そういう感じのことはあったの?

まめた:一応、用語について、どういう言葉なのかっていうことをみんなで確認したりだとか、あとは、いろんな論点が出たんだけどね。当事者がプレスリリースで出してくる言葉をそのまま拾ったりしがちなんだけど、当事者が間違えてることが多いので、そこをちょっと疑ってかからないといけないっていうことがあって。例として挙げられてたのが、「LGBT向けの服屋さんがオープンしました」みたいな記事があったのね。LGBT向け衣料……服ですね。衣料、「衣」に料金の「料」の。「LGBT向け衣料のお店が始まりました」っていう新聞の見出しだったんだけど、中身はトランスの人向けの服とかだったり下着の、そういうお店だったんだけど、なんかその、見出しとして結構微妙になってるのは、元々それは売ってる団体とか人たちがそういう呼び方をしているので、そのまま言葉を使うと逆に伝わりにくくなっちゃったとか、そういうことがありましたね。

キャシー:はぁー。でも、そうだよね。LGBTがあまりに浸透しちゃって、でもLGBTっていう言葉がすごく、全然違う人たちをひっくるめた言葉だから。あー、そうなっちゃうのかあ。

まめた:結構ね、「この記事どうだった?」みたいな実例を持ち寄ってディスカッションしたりして。

キャシー:あー、それは面白いね。

まめた:うん、面白かった。

キャシー:もう一つ聞きたかったのが、LGBTがさ、流行語大賞第3位とかになってたじゃん? 何か、どうなの? このブームみたいな感じの流れは。

まめた:どうなんでしょうね。その、差別とかしたり、あからさまに気持ち悪いとか言うと、ちょっとまずいかなっていう風潮にはなりつつあると思うんだよね。前とかは、もっと普通にいじったりとかしやすかったと思うけど、最近は、「でも、そういう人たちもいるみたいだし」っていうのが人々の頭の片隅にあるような気はする。

キャシー:はぁ。じゃあ、もっと礼儀正しくなったんだね。

まめた:まあ、でも、どこまで分かってんのかなっていうところだよね(笑)。

キャシー:あぁ。何か、その話を聞いてると、トロントに似てる感じがする。みんな、どこまで分かってるのか分からないけど、人権で守られてるから、下手なこと言っちゃいけないっていう、そういう空気はある気がする、こっちも、うん。

まめた:まあ、でも、みんな普通にいまだに差別的なこと言うけどね。あの、でも、ちょっとこう、何か変化があったなと思ったのは、この前ツイッターで石原慎太郎、元東京都知事の。あの人が、まあ、ずっと同性愛者に対する差別的なことを言ってきた人なんだけど、この前また同じことを呟いてて。同性愛者に対して失礼なことを書いてたんだけど。何か、それの反響とか、それに対するリプライとかを見てると、石原さんを支持する人が減ってると言うか、「石原さん、何を言ってるんだ!」っていう人たちが、すごいエネルギーを持ってると言うか。だから、前は石原さんのような人がたくさんいて、大変だなという印象を受けてたんだけど、何か最近はちょっと潮目が変わってきて、あからさまに「理解できない」って言ってる人はちょっと「追いついてない」みたいな形で捉えられてるんだなってことを思ったことがありました。

キャシー:はぁ。でも、そういう変化があるのは面白いね。

まめた:石原さんは何も変わってないんだよ(笑)。

キャシー:はっはっはっは(笑)。まあね。ははは(笑)。いま何してんの、あの人。

まめた:何してんだろうね。でも、もう隠居してるんじゃないの?

キャシー:あぁ。あんまり推測で言っちゃだめだよ、まめたさん。ははは(笑)。その、2015年に日本に帰ったときに、地元の友達、みんなノンケの男の子だと思うんだけど、久々に顔を合わせて、で、もうほんとに今更だから、もうほんとにどうでもいいやと思ってカミングアウトしたのね。で、そしたら何か、すごくみんなLGBTというか、ゲイ・コミュニティのスラングとかを知っていて。

まめた:何で?

キャシー:何で? って話だよね。いきなり、「あー、お前ゲイなんだ? で、ネコなの? タチなの?」って言われて。何でそんな言葉知ってるの、みたいな。ハッテン場とか知ってる。何でハッテン場を知ってるの? みたいな。すごい戸惑った。あまりにみんながみんな知ってるから。ちょっと戸惑った。一人だけならまだいいんだけど。何かみんなそういう知識があって、一緒に高校とか中学とか過ごしてきた子たちだから、そういう知識が昔はなかったはずだから。何が変わったんだろうね、っていう。すごい不思議。

まめた:何か最近ね、LGBTスピーカー養成講座っていうのを静岡でやってて、全部で3回の講座なんだけどね、そこで聞いた話っていうのが、LGBTについて研修をして下さいっていう依頼が、かつてない、かつてそんなことなかったのに、いきなり来るようになったと。団体とか個人に対して。で、「ぜひぜひ」ってなるんだけど、いざ喋るとかいうことをしたことがないってことで、「何を誰が、どう喋ったらいいんだろう」みたいなところで悩んだりとか、あとまあ、いきなり忙しくなる。講演の依頼とかも来るし、相談する人とかも来て、なかなか時間の流れ方っていうのが、これまでのんびりやれてた人たちとかも、ちょっと時代の変化みたいなところに合わせて、振る舞い方とか、やっていかなきゃいけないこととか変わりつつあるのかなってことを、ちょっと思ってるんだよね。

キャシー:面白いね。どうだった? そのLGBT養成講座をやってみて。

まめた:まあ、基本的に自信を持って喋ったらいいと思うんですよ。で、上がった声としては、当事者じゃないのに自分が語っていいのかっていうこととか、あとは専門の何かこう、例えば大学でジェンダーとか勉強したことがないっていうことに何となく引け目があったりとか、何て言うのかな、正しい知識みたいなことをどこかできっちり学ぶ機会があった方がいいっていうか、ないで喋ることに対する不安みたいなのは、あるんだろうなっていうふうに思ったんだよね。でもまあ、その、一定の間、活動したりとか、いろんな当事者の人の話を聞いたりとかして、そこで学んでることはちゃんと学んでることだし、「自分が言ってることが正しいのかな、大丈夫なのかな」っていうことを反省しながらやっていくぶんには、それはちゃんとした伝え方になってるんじゃないのかなっていうふうには思うんだけど。

キャシー:はぁ。でも、そこらへんは、まめたさんとしてはどうなの? 当事者じゃないのに、例えば「LGBTの話をしてください」って言われたときに、一人で行く場合、絶対に当事者じゃない部分が出てくるわけでしょ?

まめた:そうする場合は、どういうふうに当事者の語りっていうのを入れていくのかとか、すごく問題になると思うんですよ。で、そこ、すごいポイントで、当事者じゃない人が勝手に代弁しすぎるのってよくなくて、ちゃんと当事者の語りを、ビデオとか流したりとか、書いてるものを配ったりとか、そういう形で紹介することもできるだろうし、何で逆に自分が当事者じゃないけれども、そこに関わるきっかけになったのかみたいなことを話したりとか、やれるかなというふうに思ってる。

キャシー:はぁ。でも個人的にもそうなんだけど、「LGBTの話をしてください」って依頼されるのがすごく一番苦手なワークショップで、一回ワークショップをやってくださいって依頼されてトロントのNPOに行ったんだけど、事前に言われたのが、「LGBTが過ごしやすい環境作りの話をしてください」って言うから、もっとNPOの環境の話をしようと思ったら、NPOのスタッフたちが全然LGBTのことを知らなかったから、LGBTの基礎知識みたいなことをやることになって、いきなり。全然準備してないのに。ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスから、全部いちいち意味を説明しなきゃいけなくて、そこが一番難しいところじゃない? 例えばトランスジェンダーとかもさ、単語一つが、ものすごいたくさんいる人たちを全部ひっくるめていて、ジェンダークィアだったり、Xジェンダーだったり、MtFFtMとか、全部ひっくるめて入ってるでしょ? それをどこまで説明すればいいのか、しかもゲイ男性の自分がどこまで説明していいのかっていうところがすごいあって、だから、ほんとに、「LGBTの話をしてください」って言われるときは、できるだけ内容をもっと絞るようにしてる。

まめた:だって、性に3要素あるのか4要素あるのか6要素あるのか、そのへんの話とかもすごい難しいよね。考え始めるとね。

キャシー:うん。そこらへんは、LGBTスピーカーはすごい難しい。

まめた:大事にしたいと思ってることが一つあって、それは、何で、そのスピーカーの人がこの話をしてるのかってことを、ちゃんと自分の言葉で喋れるようになってほしいっていうのがある。この前やったワークショップでは、例えば、職場でLGBTのことをもし話すことになるとしたら、何でこの話をこの職場でしなきゃいけないのかっていうことを、その「なぜ」の部分をちゃんと自分の言葉で語れるかっていうところをフォーカスしようと思って、ちょっとみんなで考えてもらったの。例えば、学校の先生だったら、子どもたちにいるかもしれないとか、あと、介護の仕事してる人だったら、利用者さんにいるかもしれないとか、そういう、お客さんとか、対象となる人たちにいるかもしれないっていう視点を持ったほうがいいんじゃないかとか。そもそも何でやるかって言うと、今この働いている状況がみんなにとって過ごしやすいものではないっていうことに、まずはみんなで気が付こうとか、そのへんを自分の言葉で喋れるようになってほしいな、みたいな、そういうことをやったりしましたね。

キャシー:でも、そうだね。そこのほうが大事だよね。LGBTが何なのかっていうのを完璧に理解するよりも、どうしてこのワークショップをやってるのかとか、この講演をやってるのかってところが大事だよね。

まめた:そう。

キャシー:あと、LGBTっていうことを完璧に理解しようっていう人たちが結構いっぱいいて、でも、それも日々変化してるから、完璧に理解するなんてたぶん無理に近い部分だと思うので、そこにエナジーを持っていくよりも、まめたさんが言ったところの方が大事だと思う。

まめた:なんだろう、非当事者って言われる人が喋るのってすごい難しいんだけど、逆に、自分の友達で、Aさんっていう人がいるんだけど、AさんはLGBTの当事者ではないんだけど、LGBTのことをすごい一生懸命NPOとかで発信するようになった人で。で、何でかって言うと、親友がいたんだけど、その親友と大学時代に同じ寮で生活をしてて、四六時中一緒にいて、毎日一緒にご飯を食べて友達のところで寝てたのに、その親友が外国に留学することになる直前に初めてカミングアウトされた。それまで数年間ずっと一緒にいたのに初めて言われて、何でかなって考えたときに、その子の前で結構失礼なことをたくさん言ってしまったっていう後悔があって。もし、いろんなことを考えていれば、絶対にそんなことしなかったっていう、あとになってすごくそう思うことがあったので、それをきっかけに、自分みたいな、昔の自分みたいな人がたくさんいるんじゃないかってことで、みんなにも考えてほしいってことを、自分の言葉でちゃんと喋れる友達がいるんだよ。そういう人たちが増えるといいなと思って。非当事者なんだけど、その人なりのちゃんとストーリーがあったりとか、何かそういう人たちが話がしていくといいなって。

キャシー:その非当事者の話をもうちょっとしたいんだけど。トロントでよく議論になるのが、例えば前回のエピソードでも話したんだけど、人種ってところが関わってくるでしょ? 例えばLGBTのパネルとかに行って、スピーカーが全員白人とか、そういうことが結構あって。で、あと例えば、非当事者か当事者かとか、リプレゼンテーションっていう部分がすごく重要で、誰が表舞台に立ってるのかっていうところがほんとに話の内容よりも大事な部分があって。例えば、非当事者で、当事者が本来しているべきかもしれない講演とかでスピーカーをやっている場合、話のクオリティの話ではなくて、非当事者として、当事者のスペースを占領してるっていう部分があるじゃない?

まめた:うんうん。

キャシー:そういう、アイデンティティ・ポリティクスみたいな感じのところがあるんだけど、そういう部分がある。例えばカンファレンスとかに行って、ゲイ男性がLGBTカンファレンスのどれだけスペースを取ってるかとか、白人がどれだけスペースを取ってるかとか、シスジェンダーの人たちがどれだけスペースを取ってるかとか、そういう部分がすごく考えなきゃいけない部分だと思う。

まめた:うんうん、あるよね。日本でもさ、トランスの話をしてるのに、ステージに誰もトランスがいないとかは、代わりに話してもらってても、ムカついたりとかは、やっぱあるよね。何でいないの!? みたいな。いるでしょ、誰か! みたいな。そういう気持ちにはなるよね。

キャシー:だめだよね、それ。

まめた:そこだよねー。しかもさ、映画とかでさ、よくさ、何だっけ、本来は例えばアジア人の、原作ではそうなのに、白人の人がキャストされると結構微妙だもんね。

キャシー:そう。だから、その、社会の中でパワーを、特権を持つ人たちがどんどん居場所を占領していくっていうのは、すごく……うん、ここの話とかはかなりアライの話になっていくんだけど、支援者として、アライとして、どういう立ち位置にいるべきかっていうところは、難しいところだけど、いっぱい考えなきゃいけない部分だと思う。

まめた:そうだね。何か日本でさ、この前LGBT検定っていうのが4万円で始まるかもしれないっていうことで、結構話題になったことがあったのね。

キャシー:うん。

まめた:そのLGBT検定っていうのは、えっと、一定のカリキュラムを受けて、その講義のあとに検定の試験をやってバッジを貰えるみたいな触れ込みで、ただ、その4万円っていう、高いんじゃないかとか、いろいろ議論はあったんだけど。この話を聞いたときに一つ思ったのが、誰がどうやって語るのかということにまつわる不安っていうのがみんなにあって、でもその不安って実はすごい大事で、みんながそれについて考えていくってことが大事なんじゃないかと思ったんだよ。自分が間違えて他の人の足を踏むというか、他の人をかえって困らせるようなことを言っちゃうんじゃないかっていう不安だとか、いろいろたぶん不安って、ものを発信してるときにはあって、でもその不安ってすごい大事だから、むしろその不安を何かの権威付けで、検定があるとかないとか、そういうことで保障するんじゃなくって、うまいことその不安についてみんなが語っていくってことがいいんじゃないかなって思ったんだよ。

キャシー:そうだね。特に、その、スピーカーとか、発信者とか、その、ブロガーとしても、個人的にすごくいつもそこらへんは迷っていて、「これ、いいの?」みたいな質問がいつも頭の中にいっぱいあって、溢れている感じ。ものを書くときとか、このpodcastをやるときとかもそうなんだけど、やっぱり、そういう不安っていうのは常にあるね。で、あってほしいね、そういう不安は。自信満々に何かを言えるときは、絶対何か変なこと言ってる。

まめた:そうね。

キャシー:はっはっはっは(笑)。で、このLGBT検定っていうのは、どういう内容なの? 分かる?

まめた:内容がね、全然分かんないの。それが不安なの。

キャシー:あー。4万円なんだよね? 払うんだよね? 4万円。

まめた:払うんだよ。

キャシー:あははは(笑)。っていうのも、トロントでもこういう、スピーカー養成講座みたいなのがあって、でも、前回の話でもした通りに、NPOがコミュニティの支援みたいな形でこういうプログラムとかを運営していて、だから、お金を貰ってこういうトレーニングを受けることが多いのね。例えばHIV陽性者スピーカー支援養成講座とか、あと、TEACHプログラムっていうのがトロントにあって、21歳までの若者をトレーニングして、高校に行ってクラスルームで自分の経験を話すみたいな、そういう養成講座とかもあって、ほんとに、お金を貰ってやるようなプログラムが結構いっぱいあって。

まめた:お金の流れが逆ってことだよね。

キャシー:そうだね。でも、やっぱりお金が政府から出てないから、こういうLGBT支援とかも、お金がなきゃできないことになっちゃうんだよ。

まめた:今回静岡でやったときは、静岡県の助成が出たんだよ。で、参加者は全部受講料無料で、静岡大学と静岡県と、両方のプロジェクトということでできたんで、こういうのが広がっていけばいいのかなと思ったりして。

キャシー:うん。

まめた:「講演してください」とか、そういうニーズが増えて、派遣する人もどんどん育てなきゃいけないっていうところが静岡の場合あったので、それも行政と一緒にやっていくっていうのはすごいいい発想だなと思って。

キャシー:でも、大学っていうのは面白いスペースだよね。もっと大学内でこういうLGBTの知識を増やせるようなスペースがあったら、プログラムがあったらいいね。

まめた:そう。どんどん増えてほしいなあと思ってる。

キャシー:あの、「にじーず」の話も聞きたいんだけど。

まめた:そう。えっとね、去年ちょうど1年ぐらい前に始めた「にじーず」っていうグループがあって、それは東京の池袋で月に1回、10代から23歳ぐらいまでのLGBTとか、自分がそうかもしれないっていう若者向けの居場所作りっていうのをやってるんだよね。

キャシー:うん。

まめた:で、結構人が来て、今スタッフ入れてだいたい毎回20人以上は来てて。

キャシー:すごいね!

まめた:そう、すごくって。で、年齢も今、10歳から、一番下が小学生とか、ちょっと前だとあんまり考えられないような状況になってきて。

キャシー:いいなー。そういう場所に行きたかった、小学生のとき。

まめた:うん、何かワイワイして遊んでますけど。

キャシー:何か流しそうめん食べてたよね。

まめた:そうそう(笑)。この前、流しそうめんやって。百円均一のお店で朝顔の支柱みたいな、細長い棒を買ってきて、そこに半分に割ったペットボトルをくっ付けて、それで固定をして上からそうめんを流すっていう、そういう流しそうめんをやって。終わったあと朝顔の支柱でみんながチャンバラを始めて、ちょっとどうしようかなっていう。

キャシー:あははははは(笑)。楽しそう。

まめた:うん、楽しい楽しい。何かやっぱり情報が増えてるから、自分がそうかもしれないって、わりと早い年齢で気がつく子も増えてるし、自分の子どもがそうかもっていうふうに考える親も昔と比べれば増えてるかなっていうところで、より若い年齢の人のサポートっていうのが、一つ課題としてあるなと思ってる。

キャシー:うん。でも、いいね、そういうスペースは。

まめた:そうそう。

キャシー:トロントもね、そういうLGBTの支援が結構10代後半から20代前半にフォーカスが行ってて、なかなかやっぱり、それより若い層になかなかサポートが行かない。

まめた:うんうん。何かね、どういう感じなんだろ、若い人のサポートっていうと、どういうプログラムがあるの?

キャシー:あのね、知ってる限りだと、サマーキャンプとかがあったり。

まめた:おー。

キャシー:あと、若いって言ってもね、ほんとに、高校生だと、高校のゲイ・ストレート・アライアンスみたいな感じの、高校内のサークルみたいなのがあったりとかして。あと、NPOのプログラムで、年齢をほんとに下げた、制限したプログラムとかがあんまりないと、そういうスペースはないね。

まめた:なるほどね。

キャシー:だから、ほとんどのLGBTユーススペースが、10代後半から20代前半になっちゃってるから、すごい若い子が来ても居場所がない。

まめた:結構それは感じてて、高校生と中学生は全然やっぱり違ったりするね。ノリとかもあるし、やってることも違ったりとか。大人になると、例えば23歳と25歳だとそんなに違わないかもしれないけど、中学校2年生と高校2年生って、そこそこ違ったりするから。

キャシー:全然違うよね(笑)。

まめた:部活とかでもさ、2コ上の先輩だとすごい偉かったりするから。そうやって考えると、そのへんの年齢って結構シビアなのかなと思ったりする。

キャシー:うん。あと、トロントでLGBTユースの仕事をしてるときに一番困ったのが、宗教とか、人種の問題が関わってくるのね。オンタリオ州で数年前に新しい性教育カリキュラムをアップデートしたんだけど、かなり若い、小2から始まるのかな、教育が。トピックがかなり、セルフイメージとか、メンタルヘルスとか、いろんな話をするようなカリキュラムで。それが保守のほうに行っちゃうと、かなりセンセーショナルに、「小2の子がアナルセックスについて学ぶぞ」みたいな、そういう話が流れちゃって、で、かなり、有色人種とか、イスラム教とかキリスト教の人たちからすごいネガティブな反応が出て、地域によっては高校から生徒がいなくなっちゃったとか、そういう事件とかもあって。だから、LGBTのすごい若い層を支援したいと思っても、なかなかできない。

まめた:家族の問題がすごいあるなと思って、うちに来てる人の中には、例えば、家族が「にじーず」っていうのを見つけてくれて、子どもに「こういうところがあるよ」っていうふうに紹介してくれる人もいれば、だいたいの場合は子どもが自分で見つけてきて、親には何か別の理由を付けて出掛けて来てる子が多いわけ。

キャシー:うん。

まめた:だから、親がやっぱり、どこ行くのかとか、すごい聞いてくるとか、チェックしたいような場合とかだと、なかなか来るのが難しかったりとか。だからやっぱり、16歳とか17歳とか、もっと上になってくると、一人でいろいろ行ける範囲ってのが広くなるかもしれないけど、小中学生とかになってくると、なかなか遠くまで行ったりするのが大変だったりとか、家族の影響ってのがすごい大きいよね。

キャシー:そうだね。

まめた:あと、一つすごく思ってるのが、「にじーず」見てると、高校生、大学生ぐらいになると、自分のこと、自分の困ってることとか状況とかについて、自分が言葉にして発していくってことが、だんだんできていくのかなっていうふうに思うんだけど、最初にコミュニティにアクセスするときとかは、他の人の話を聞くことが勉強になるのかなって思うことがあって。他の人の喋ってる体験とか、そういうのを聞いて、まだ自分では自分のことを喋ることが難しいとか、結構自分の中にためらいがあるっていう中でも、結構他の人の話を聞くのは、みんな何か参考になってる感じがしますね。

キャシー:でも、そうだよね。やっぱり、そういう「にじーず」みたいなスペースに行って、自分より年上の人たちで、ロールモデルみたいな感じで、いろんな話が聞けるのはすっごい大事な機会だよね。

まめた:普段は基本はずっと遊んでて、遊んで3時ぐらいになってコンビニ行ってアイス食べて、また帰ってきて、みたいな感じの居場所なんだけど、そういう中でもちょっと大学生の人を呼んで喋ってもらったりとかすると、みんなすごい真面目に聞いてて、やっぱりこういう話を聞いたりするのはいいんだなーと思ったりして。

キャシー:すんごい素敵、それ。ぜひ、そういうプログラムがあったら良かったなっていう。

まめた:まあ、全国にこういう場所が増えたらいいなと思ってますね。

キャシー:そうだね。あー(感嘆)、しみじみ、すごい、あの……

まめた:今度、あれだよ、15歳以下向けの、子どもと家族のプログラムっていうのをまた別で始める予定があって。

キャシー:あー、ほんとに?

まめた:そう。主な想定としては、小学生ぐらいで性別に違和感がある子や、その家族が孤立しないようにっていうところで、何か、でも、基本的にはワイワイやりたいので、お菓子作ったりとか、そういうのやりたいなと思ってる。

キャシー:そういうスペースってすごい大事だと思う。日本って、あんまりLGBTのコミュニティセンターみたいなのって、欠けてるじゃない?

まめた:ないね。ほとんどね。

キャシー:アクタとかディスタとかみたいな、HIVの予防啓発スペースがあったりとか、昔はパフスペースとかも。

まめた:ありましたね。懐かしいな。

キャシー:まだある? パフスペース。

まめた:ないない。

キャシー:ない?

まめた:うん。

キャシー:そういうスペースがあったけど、LGBTの活動をしていくうえで、スペースって大事だなって痛感していて、最近。日本だとどういうところにみんな集まるの?

まめた:どうなんだろうね。神奈川だと「SHIP」さんとか、大阪だと「QWRC」っていう、マンションの一室を借りてるみたいなところはあるけど、なかなかないよね。で、「にじーず」は、池袋保健所の1階にもともとHIVとかエイズに関する若者向けの発信してる居場所サロンみたいな場所があって、名前は「フォーティー」っていう名前の場所があって、そこの人たちと一緒にやってるから、アクセスもいいし、公の場所というところで、いつも同じ場所を使えるんだよね。

キャシー:あー、そうなんだ。

まめた:ただ、何か、フォーティーでやる意味ってすごいあって、普段そこは若い人がダラダラできる場所で、「にじーず」ってのは月に1回しかやってないけど、行きたければ平日とか、毎日そこは空いてるし、そこのスタッフといつも「にじーず」をやってるんで、何か喋りたいなってことがあったときにそこに寄って喋ったりもできるし。

キャシー:あー、それはいいね。

まめた:そうそう。LGBTのためだけの場所じゃなくって、普段からそこはいろんな若者の、例えば「試験ダルいわぁ」とか、「先生めっちゃおかしいんだけど」とか、部活でこういうことがあってちょっと自慢したいとか、そういうことを話せる場所だから、LGBT以外のことを喋りやすい場所なので、そういうところと一緒にやってることは結構意味があるかなと思って。

キャシー:将来的に、日本にLGBTのコミュニティセンターみたいなのって、できると思う?

まめた:どうだろう。

キャシー:あと、必要だと思う?

まめた:個人的には、もっと既存の施設とコラボしたりとかのほうがいいんじゃないかなって思う。何だろ、自分が若者支援とかやってると、「こっちの世界とあっちの世界」みたいなふうに分けて考えがちだなっていうのがあって。特に、若い子って極端に考えがちだなってのがあって。そうじゃなくて、確かに、この時間とか、この日はそういうプログラムでやってるけれども、別のことも話せるし、別の人たちも来る場所でやったほうが、「こっちの世界とあっちの世界」みたいにならずに済むかなって思ったりする。

きゃしー:うん、そうかもね。

まめた:まあ、トピック入れると、LGBTだけでやるニーズっていうのはあるかもしれないから。

キャシー:カミングアウトサポートとかね。

まめた:そうそう。そのほうが安全だって感じる人もいると思うから。

キャシー:ぜひ、日本での活動、頑張ってください。いつも、まめたさんの活動を遠くから見てます(笑)。

まめた:ははは(笑)。じゃあ、見られてます(笑)。

キャシー:あの、今回、結構いろいろ日本の話が聞けたんですけど、どうですか? こうやって日本の話をしてみて。

まめた:うん、まあ、明るいなって思ってて、大変なことはいっぱいあるけど、状況が変化してるし、動きがあるってことは明るいなって思ってる。

キャシー:うん。

まめた:なんで、5年後、10年後どうなってるのかなって楽しみですね。

キャシー:楽しみだね。楽しみだけど、ちょっと怖いね。

まめた:ははははは(笑)。まあ日本は……

キャシー:でも、そういう不安もいいんだよね。ははは(笑)。

まめた:この話を最後にしよう。ちょっと感動したことがあって、栃木県のあるところに呼ばれて、LGBTの子ども・若者支援の話をしたんですね。

キャシー:うん。

まめた:そしたら、そこの教育関係の施設の施設長の、もうたぶん60ぐらいの男性が、最初に挨拶みたいな感じで、「今日はお越しいただきまして、ありがとうございました」みたいな、全体に挨拶するわけですよ。普通そういうのって、当たり障りがない挨拶をして、講師の紹介をして、っていうことがだいたい多いんだけど、そのときの挨拶をしてくれた教育長の方ですかね、すごい素晴らしい方で、「この前アエラっていう雑誌を見た」と。「そこでLGBTブームっていうことが検証されてた」と。その挨拶してくれた人は、「人権とブームってことを一緒に考えた場合に、やっぱり、最近の話題みたいなふうにLGBTのことを扱うのは間違ってるんじゃないかっていうふうに僕は思った」っていう話をしてて。その彼は、ずっと部落差別の問題とかを一生懸命やってきた人で、部落差別っていうのは江戸時代とか、もっとその前とか、数百年とかすごい歴史があることで、LGBTっていうのはひょっとしたら、性別に関することって、数百年とかじゃなくてもっとすごい昔からいろいろ脈々とあった流れの中の出来事であって、だから、最近になってLGBTが脚光を浴びたとか、新しい人権課題ってことはないんじゃないかってことを、その人が喋ってたんですよ。

キャシー:うん!

まめた:すごい嬉しくて。何か、これまでやってきたいろんな取り組みの中で、それを応用してLGBTについて考えてくれる人たちが現れてるってことが、すごい嬉しかった。

キャシー:嬉しいね、それは。

まめた:やっぱり何か、最近の流れとか、それこそ「石原慎太郎が時代に追いついていない」みたいな表現で語られることに対して、それで楽な部分もあるんだけど、別に今に始まったことでも何でもないから。そういう視点で考えられる人がちゃんといるってことが貴重だな、ありがたいなって思って。そういう人が増えてほしい。

キャシー:というわけで、次回予告。

まめた:次回予告……次回、何にしましょうか。

キャシー:あの、僕のインスタグラムでリクエストがあったんですけど、こたるいママさんからのリクエストで、「はじめまして。興味深くてあっというまの30分でした!」……これが1回目のエピソードですね。「次回以降も楽しみにしています。機会があればXジェンダー(Third gender)についての話題も聞いてみたいです」という話なので、次回ちょっと個人的に話をしてみたいのが、トロントで高校生とか中学生とかにワークショップをするときに、ジェンダーの多様性とかセクシャリティの多様性がすごいことになってる話がしたい。

まめた:うんうん、ぜひぜひ。トロントと言えば、もういろんな、トランスジェンダー、トランスアンブレラというか、いろんな人がたくさんいるイメージがすごいある。

キャシー:あ、ほんとに?

まめた:うん。日本もあれだよね、LGBT以外のアイデンティティ持つ人が非常に増えてるよね。

キャシー:そう?

まめた:ジェンダーもそうだし。自分で自分のセクシャリティについてどういうふうに捉えるかとかっていうところで、より、LGBTとかだけじゃなくって、捉えていこうっていう人たちがいて、一方で、「そもそもレズビアンってどんな人?」みたいなところも、個人的にはすごいテンションが上がるテーマで。

キャシー:うん。

まめた:これまで、レズビアンとかゲイって言われていた人たちも、それってそもそも何を指してたの? みたいな話はまだまだ、どんどん議論し尽くしても足りないみたいなところがあると思うから。何か、自分をどうアイデンティファイするかとか、アイデンティティをめぐる言葉っていうのは面白いかなと思う。

キャシー:じゃあ、ぜひ次回はいろんなアイデンティティの話をしてみましょう。まあ、そんな感じで、はい。それでは。

まめた:はい。

キャシー:また次回に会いましょう。

まめた:じゃあ、またお会いしましょう。

 

Producer: キャシー (@torontogay69)
Co-host: 遠藤まめた (@mameta227)
Composer: hirontier/Hiroyuki Sugawara (@hirontier)

そして、桜井弓月さんの超丁寧な文字起こしに大感謝!

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