海外で仕事探し – 挫折と失望の繰り返し

2016年の初め、いきなりフルタイムの仕事を離れて自分探しをすると豪語したが、とても愚かな決断だとすぐにわかった。

トロントの失業率は悲惨な状態で、特に若い人は仕事探しに苦労している。エントリーレベルの仕事が既に絶滅状態で、数年の就労経験がない限り誰にも相手にされない。会社が人材を育てる時代は終わったのだ。仕事を始めたその日からトレーニングなしで成果を出せないなら、どんなに優秀でも価値はない。少なくとも、それが自分の経験であった。

「君に素質があるのはわかっているが、うちの会社で活躍できるようになるまで三ヶ月はかかる。君のような人材が山ほどいる中で私が君を雇う理由はない。それでもここで働きたいなら、無給のインターンシップなら考えてみてもいい。」

とあるマーケティング会社のトップから実際に言われた言葉である。悲しいことに、返す言葉はなかった。その仕事を欲しがっている人が数百人いる中で、その会社の視点からすれば自分には何の価値もない。自分がその会社に貢献できるようになるまでのトレーニング期間にお金を使うより、もっと経験と技術のある人を雇う方が安上がりだ。

「雇われたいなら、会社が君を雇うコストの二倍以上の利益を達成できると立証すればいい。それだけのことだ。」

それでは自分が金儲けのための機械のようである。しかし、社会はどんどんその方向に傾いている。利益率が物事の価値を図るものさしになって、無駄だと思われるプロセスは削除される。そんな基盤の上に構築された社会で、どうやって人間らしく生きられるのだろうか。毎月ごっそり減っていく貯金と重なっていく履歴書のコピーを見つめながら、迷子になっていた。

八月、自分の仕事経験を活かせる非営利団体三社と面接をする機会がやってきた。自分の全てをぶつけて最善を祈ったが残念な結果に終わった。三社ともとても評価してくれていたのにも関わらず、自分が選ばれなかったことが何より悔しかった。政府の予算がどんどん減っていく中で、非営利団体は仕事のない優秀な人材が溢れている。いくらベストを尽くしたところで、数年の経験しかない自分が十数年も経験のある人と競争するのは厳しい。有色人種で、ゲイで、移民で、英語にアクセントがあって、カナダで大学教育を受けていないというハンディキャップを加えると絶望的である。

ここまで挫折を味わったのは久しぶりだ。もっと若い頃は失敗が当たり前だったから、そこまで深く考えずに前に進めていた。しかし、30歳になってから転ぶと昔よりずっと痛い。プライドとエゴが前より肥大化したのはもちろんだ。以前より周りがよく見えるから、その挫折の意味を分析してしまう。そして、自分の置かれた状況が怖くて、前に進めなくなってしまう。そんな中で、母も、彼氏も、周りの友達もみんな手を差し伸べてくれた。ここまで周りに助けられたのも久しぶりである。そんなサポートがあっても孤独な戦いであることには変わりなかったが、転んだ時の痛みを少し和らげてくれたのも確かである。彼らがいなかったら自分はどうなっていたのだろう。

クリスマスが近付くと絶望感も膨らんだ。この一年で既に10社以上と面接をしてきた。面接に辿り着けるだけでも大きなステップだと理解しているが、それが仕事に繋がらないことには成果だと感じられない。履歴書とカバーレターを百通以上は書いただろう。面接に招かれるために、様々な手を尽くした。周りは自分を信じてくれていたが、肝心の自分は自分自身を疑うことばかりしていた。それでも、踏ん張って前に進むしかない。次の面接はきっと違う結果になるかもしれない。そう自分に言い聞かせる。

昨日の朝、仕事のオファーがメールで届いた。信じられなくてほっぺを抓った。ずっと待ちわびていたものがこんなにあっさりしているなんて、少し拍子抜けした。母に電話して、久しぶりに喜ばしいニュースを伝えた。彼氏もホッとしただろう。今までお世話になった人たちにお礼のメールを送るだけで丸一日かかってしまった。昨晩はなかなか眠れなかった。今回はたまたまラッキーだっただけだと理解しているからだ。

この社会、自分の努力だけではなんともならないことが多すぎる。いくら努力しても報われないかもしれないというのが今年一番の教訓だろう。成功している人が勝ち誇りながらこうすれば成功できると語る自慢話を鵜呑みにしてはいけない。決してフェアではないデコボコした世界で人間らしく生きるのは大変だ。だから、これからもたくさん挫折を味わうのを覚悟して前に進みたい。自分ならきっとまた転んでも立ち上がることができるはずだ。

img_3356

2017年と共に、新しい職場で新しいキャリアを歩むことになる。その仕事についてはまた別の機会に紹介しよう。この年末はまったり休憩して2016年の傷を癒す予定だ。

ハッピー・ホリデー&ハッピー・ニューイヤー!

海外で仕事探し – 挫折と失望の繰り返し” への3件のフィードバック

  1. I’m very happy for you! When you are rejected many times, you might think you’re worthless, and it sucks really. I hope you’ll take this chance, and be happy for yourself.

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中