この4月末でトロントに来てから5年が経過したわ。
顔のしわも、肛門のしわも増えて、順調に熟ゲイへの花道を歩むキャシー。
そんなベテランなトロントニアンになった今でも。
実はどうしても慣れないものがある。
ええ、寿司よ。
寿司といっても、日本の寿司とトロントの寿司は少し違う。
この写真の寿司のように、良く言えば独創的な寿司なのよ。
悪く言えば、新鮮な魚が高く、寿司を知らない客層が多いから。
コストパフォーマンスが良く、トロントの人の口に合う寿司が定番化したのよ。
アボカドとか、てんぷらとか、カニカマとかフツーに入ってるし。
スパイダーロールとか、ボルケーノロールとか、無駄に名前がカッコいいし。
寿司職人さんが握ってくれるような正統派な寿司はなかなかないわ。
だからあたし、あんまりトロントで寿司は食べないのね。
友達の間でも、“寿司は食べないキャシー”で有名よ。
そんなあたしが今日はお寿司を食べに行ったのよ。
しかも、ヤングストリートに並ぶ安い食べ放題の寿司じゃなくて。
高級ホテルにあるワイン飲みながら食べるお上品な寿司に出かけてきたのよ。
というのも、うちの彼の上司がギフトカードをくれたのね。
「ここの寿司は本当に美味しいから。お母さんがトロントに遊びに来たときに連れていくといいよ。」
とそんな優しい上司を裏切って。
「せっかくトロントに遊びに来るのに、うちの母親に寿司を食べさせるのはもったいないよ。」
とうちの彼はそのレストランには行かず。
結局そのままになってたギフトカード。
それではさすがにもったいないし、上司の好意に対しても失礼なので。
オシャレなデートのつもりで、その寿司屋さんで彼とディナーを食べてきたわけ。
「うちの上司は味音痴だから期待しない方が良いよ!」
と彼から忠告されてたんだけど。
これだけ高級なレストランならそれなりの食べ物が出て来ると思ってたのね。
そのギフトカードのバリューは$50だったので。
ほたてフライ($10)
2人様舟盛り($43)
海老フライロール($12)
と、$50を少しオーバーになるようにオーダーしたのね。
前菜のほたてフライがなかなか美味しかったので。
$43もしちゃう舟盛りはどんなものだろうと思っていたら。
扇形の木製のお皿に、(とても小さい)にぎりが10点。
そして、(これまた小さい)カリフォルニアロール、スパイシーツナロール。
それと、もう一つ他のロールと刺身が申し訳程度に乗っていたわ。
「あたしこれ食べたあとにさっき通り過ぎたフィッシュ&チップスのお店で夕飯食べるからね!」
とそれを見た瞬間に気が動転するあたし。
「まぁまぁ、ギフトカードで安く食べられるんだし。」
と彼になだめられて、やっと箸を伸ばしてみる。
とりあえず無難なサーモンにぎりを口に入れてみる。
アレ?
お米が…酸っぱくない。
このシャリ、まったく酢を使ってない。
チンコは酸っぱくない方が美味しいけど。
シャリは程よく酸っぱい方がお魚の風味が引き立つでしょ?
「もうマジでありえないんだけど!」
と彼を睨みつけながら、無言で舟盛りを平らげるキャシーたち。
「あれ?そういえば3皿目は?」
と、ふと海老フライロールがないことに気付くあたし。
「ほら、ここ。」
と舟盛りの端っこに並ぶロールを指差す彼。
まさか、この舟盛りが追加でオーダーしたロールまで乗せていたとは。
「この舟盛りのボリューム喧嘩売ってるでしょ?」
といい加減に堪忍袋の緒が切れそうなあたし。
ギフトカードがあったとしても、こんなものに$43+$12も払うなんて。
味の方も別にヤングストリートの安い寿司とそこまで差がないし。
なんだか悔しくて泣いてしまいそうよ。
「とっととお勘定して、フィッシュ&チップスに行くわよ!」
とキャシーが言うと、ギフトカードに手を伸ばす彼。
オシャレな封筒の中を覗いた彼はビックリした顔をして。
「オー!ノー!」
とか言うので。
神様お願いだからギフトカード忘れたとかやめて。
あんなお寿司に$55+税金(13%)+チップ(15-20%)も払いたくないわ。
と心の中で祈りながら、恐る恐る聞いたのね。
「何よ?」
そんなあたしを申し訳無さそうに見て。
「ギフトカード、$50かと思ったら…。」
「いくらだったのよ?」
「$150だった。」
それを聞いて爆笑するあたしたち。
「なんで来る前チェックしなかったのよ!」
「だって隠れてて見えなかったんだもん!」
「$150もあったら、こんな寿司じゃなくてロブスター&ステーキもオーダーできたじゃない!」
と呆れ果てたわ。
「また来る?」
と彼が苦笑いしながら言うので。
「絶対来ないわ!」
ときっぱり断ったあたし。
「しかし、こんな寿司に$100も出して食べる人がいるのね。」
と言うあたしたちの近くのテーブルでは。
白ワイン飲みながら美味しそうにフォークで寿司を食べるカップルがいたわ。
そんな後味の悪いディナーを終えても、帰り道笑いっぱなしのキャシーたち。