まだ日本にいた頃は、同棲や同性婚はまだ遥か遠くの話で。
気持ちいいセックスと楽しいデートしか見えてなかったあたし。
それなのに、何があったのか最近は子育てまで身近な話になって来た。
「ゲイやレズビアン、トランスジェンダーが子育てなんて。」
とゲイであるあたし自身だって昔はそんな風に思っていた。
家族にはお母さんと、お父さんが必要だとしっかり洗脳されたせいね。
まだ子供だった頃、同じアパートメントに住んでいた家族には養子がいて。
「養子だなんて子供が可哀想じゃない。」
とうちの母がよく言ってたから、いつか自分もそう思うようになった。
親がゲイだったら、授業参観は子供にとって苦痛になると考えなくてもわかる。
しかし、今の自分は同じようには考えていない。
子供が可哀想だなんて、そんな理由付けは通用しない。
ゲイであるその親も、ゲイを親に持つその子も、何も間違ってなんかない。
「ゲイが子供を持ったら、その子供が差別されて可哀想。」
だなんて言う人は、それと同じことを他の人に言えるのか。
「黒人が子供を持ったら、人種差別に晒されて可哀想。」
今の時代にこんなことを言えば、忽ち問題になるだろう。
レイプされた女性に、なんでそんな露出した服を着たんだと聞いたり。
虐められている子供に、みんなと同じようになれないのかと言ったり。
全然筋が通らないことが平気で常識だったりするから困るわ。
このままだとキャシーずっと説教しちゃうから、話を戻して。
この前3年以上同じ彼氏と付き合ってる友達とお茶をしたわけ。
「そういえば、この前クィア親子プログラムのコーディネーターやってるクリスさんとゆっくりお話ししたのよ!」
「あのゲイパパクラスやってる人でしょ?知ってるわ!」
とトロントにあるゲイ向けの子育てクラスの話になったわけ。
このゲイパパクラス、子育てに興味がある人から既に子持ちの人まで参加できて。
いろんな分野の人から話を聞きながら、情報交換ができちゃう場なのね。
ちなみに、この他にもレズビアンやトランスジェンダー向けクラスもあるのよ。
一緒にお茶した友達は参加したいようだったけど、いろいろ複雑らしく。
「うちの彼めっちゃ子供が欲しがってるのね。」
「でもまだ彼の親はあたしたちが付き合ってるの知らないし、この時点では何も期待を持たせたくないのよ。」
「一緒にこんなクラスに参加したら、彼の親が知らないままに子育てまで始まったら怖いもの。」
こんな感じで、ため息と共にいろいろ打ち明けてくれた。
その一方、うちの彼は子育てに一切興味がないようで。
「育てるのは犬まで!」
とその一点張り。
キャシーもそこまで子育てが現実的とは思ってないけど。
せっかくなら、もう少し可能性を検証してみたいじゃない。
「ねぇ、今度のクラス一緒に内緒で受けちゃう?」
なんてあたしはその友達を誘ってみたわけ。
「クリスさんとも仲良くなりたいしね。」
「あたし、白人のおじさんなんていつもは惹かれないけど、彼のゲイパパフェロモンには抗えないの。」
「あんた、まさか子育てじゃなくてクリスさん目当て?」
「バレた?」
そんな感じで、近いうちにゲイパパクラスに参加するかもしれないわ。